海外在住とVPN

(リクエスト記事)

以前「VPNでワールドカップを視聴する方法が一番良い」と書いたところ、VPNってなに?VPN?怪しい!
犯罪者が使うモノじゃないの?情報盗まれるんじゃないの?何がいいのかわかんない!等々と反応があったので、今回は海外在住者のためのVPN解説をしていこうと思う。

VPNとはなにか

VPNというのは、インターネットの通信を、まるごと中継する機能のことである。たとえばフィリピンのスマート社を利用している人なら、

スマート社→VPNサービスのサーバー(例えば日本)→接続先 ということになる。わたしはいまフィリピンにいるんだけど、ドイツに接続すればドイツのIPになってしまう。
こんな感じだ。

つまり、中継サーバーが間に入るので、接続先からは、その国のIPとなる。これがVPNの仕組みだ。

VPNは怪しいものではない(IPを偽装するソフトではない)

まず真っ先に伝えたいことは、VPNは怪しいソフトではない。
そもそも、インターネットの仕組みというのは、そもそも中継サーバだらけなのである。
メールだってWEBサービスだって、中継サーバ、キャッシュサーバといったサービスが世の中に溢れているのだから、VPNを挟むということ自体は「データを中継する」というネットの仕組みとしてはよくある話なのである。

VPNの匿名性

VPNは強力な匿名性を持っている。VPNサービス事業者は、顧客のデータ自体を保管していないし、ログ(通信記録)も保有していない。ただ中継しているだけ、でお金を取っているからだ。これは仕組み上、こうなってしまうからに過ぎない。ただし、VPNは匿名性こそ担保されているけども、接続的には大雑把なものである。VPN接続自体はバレバレなのだ。

VPNが情報を盗むということは無い

少なくても、大手と呼ばれるVPN事業者は、そのようなことをしない。(無料で使える怪しいVPNアプリは知らないけど)後述する。

VPN業者が信用できる理由

VPN事業者というのは、世界中に中継サービスを提供している、「知られざる大手企業」だ。簡単に書くけど、これがどれほどの需要があるか!大いに想像力を働かせてもらいたい。
こういったIT企業とは、常に最高のサービスを提供しないと、あっという間に顧客が激減してしまう。特にVPN業者というのは猛烈な競争に晒されているといっていい。おかしな通信傍受などしたら、信用第一の商売として致命的な損失を被ってしまう。

VPN業者は、匿名通信を提供する都合上、各国の警察からガサ入れを受けることが(よく)ある。
一般的に、企業が警察の捜索を受けるというのはスキャンダルだけど、VPN業者だけは別だ。「警察が来ました!」と自社のブログで大々的に宣伝するのである。
『警察が来たけど記録を保管していませんでした!彼らは何の成果もなく帰っていきました!』と発表することで、そのVPNの信頼はウナギのぼりにあがり、契約者数も爆増するからである。顧客の通信を傍受したり、記録したりしていないという証明となっているわけだ。
逆に、契約者との神聖な約束を破り、ログを記録していたり、情報を引き渡してしまったVPN業者は、ただの噂であっても敬遠される。世界の何百ある国の中継サーバの一か所のガサ入れを隠しただけで、そのVPNの信頼は地に落ちるのが「中継サーバ業界」である。

 

どうしてVPNをわざわざ使うのか?

これには個人個人で、様々な理由がある。たとえば中国出張に行くなら、規制でほとんどサービスが動かないので使うしかないという人がいる。
また、私の住んでいるフィリピンの場合は、外国人がフィリピンの政治的発言を行うことは禁止されている(強制送還処分を受けることがある)
このように、政治的理由がある場合。

次に、特に日本のサーバは、海外接続自体を禁止しているところが多い。例えばXサーバ、アベマTV、DMMといった企業である。
海外在住者にとって、ストレスMAXとなるのは、ただ自分が外国にいるというそれだけの理由で、なんの悪意も無いのに接続を遮断され、欲しい情報が手に入らないことだ。
このように、海外接続禁止サイトをつなげたい理由がある場合。

次に、日本語しかできない人の場合、海外IPだと勝手に英語に切り替わるのがストレスとなる場合がある。日本IPならそのような心配もなくなる。
このように、言語のマッチングに齟齬がある場合。

次に、サブスクリプションを外国で契約したい場合。例えばトルコでネットフリックスを契約すると、激安で一年間使えてしまう。
こういった使い方は厳密にはグレーなのかも知れないが、なにか犯罪となるわけでもないだろう。ちょっとした節約術といったところである。

次に、IT系技術者が、その国にあった表示の確認をしたりすることである。現地契約や現地住所、また海外通販での現地購入等も、素直に「日本に住んでます」と知らせて余計な手間をかけるより、現地接続にしてしまえば、ラクに物事が進むということがある。

その他、ゲームやメール等、実に様々なサービスにおいて、IPを中継して変更するというのは、賢い方法だ。うまく使えば武器になることなのだ。

 

犯罪者はVPNを使わない

意外に思うだろうが、コンピュータ犯罪系においてVPNを使う人は少ない。いてもせいぜい誹謗中傷やアカウント乗っ取りといった、小さい犯罪にしか使われない。
VPNというのは、たくさんの人が同じサーバに同時接続するという性質があるので、IPは固定されがちだからである。このIPリストというのはとっくに一覧表になっており、不審なアクセスとして(いったんは)疑われるようになっている。例えばVPNを通じてクレジットカードを切ると、初回は必ず本人確認が2回3回と行われる。
犯罪者というのは、こういうことをよく知っているので、わざわざVPNを使って「盗んだクレジットカードをダメにする」ようなことはしないものだ。彼らが使う手法はリモートデスクトップやラットといった専門的な通信方法を使うし、VPNの特徴だったIPアドレスやDNSをわざわざ利用はしない。

VPNでもクレジットカードは使える

たとえば楽天カードなんかは、VPN経由で使用すると最初は特にカードが止まってしまうんだけど、他のカードは本人確認をやれば切れたりする。
これは何故かというと、カード会社だって決済して欲しいからだ。VPNサービス自体はカード会社にとって、不正利用の温床と思われていない。

海外を飛び回る人というのは、今日はフィリピン明日は日本、中国経由して台湾泊。全部クレジットカード決済!なんて人は普通にいる。そういった人のラップトップPCにVPNソフトが入っていて、アメリカに接続しっぱなし、なんてケースは山ほどある。
だから最初のうちは本人確認がウルサイけども、「あなたは海外でもカード使う人」と認知されれば、VPNだろうがなんだろうが、普通に切れるようになる。
カード会社だって、世界で使えるマスターカード!旅行にはVISA!なんて宣伝までして利用を促進しているんだから、不正利用でなければ良いとなる。
わたしは他人のカード番号を教えてもらってコッチで決済したことは何百回もあるけど、最終的に通ることが多い。(本人に確認取れるんだからな)
このへんは悪用されるので細かいことは書かないけど、不正でなければ良いのだ。これはpaypal等の純オンライン決済でも全く同様の処理である。
要は海外在住、海外決済をする人だと認識されれば良い。

 

オススメのVPN業者とはどこなのか

まず有料であることである。無料のVPNは基本候補から外してよい。
次に、日本語のVPN記事は、基本的に信用できないと思っていい。アフィリエイトまみれだし、最新の正確な情報は書いてない。
世界標準で選ばれているVPNの比較記事もない。最低でも英文記事で、規約研究までしているところでなければならない。とはいってもそんなことを読者はしないであろう。

一応、よく宣伝されている有料大手業者を4.5紹介してみよう

エクスプレスVPN

最大手といっていい、メチャクチャ宣伝している世界イチのVPN会社である。動画配信系に強い。IPを選べないクソ仕様であるが、一点豪華主義となっていて、突破力はある。
難しいことを一切考えずに契約するにはいい会社。接続も早い。なにしろ「日本ポチ→接続ポチ」だけで終わりというUIを採用している。
ストリーミング突破について自信をもって宣伝しまくっているので、すぐにアベマやFANZAを見ることが出来る。しかし対策されるとナススベナシである。技術で偽装し、ストリーミングサービスに喧嘩を売る会社。そしてフィリピンIPが使える珍しい会社でもある。ワイは気に入らないけど、人には勧めているw

ノードVPN

エクスプレスVPNと真逆。IPは使い捨てで、サーバを自由に選べる。現在は縮小傾向にあるが、以前はロシアやインドなど、なかなか攻めた接続ができた。他のVPNにはない機能も多い。キルスイッチ有。IPひとつひとつはゴミであるが使い捨て。汚れたら生まれ変わるディスポーザブルIP運用なので、自分でいろいろ試せる。安い。各国の役所に喧嘩を売りすぎて落ち目であるが、利用者としては心強いエクスプレスVPNのライバル企業である。アホほど機能があるのはいいけど、時々アプデで生IPリクエストされるので、匿名性については保証しない。

PureVPN

ごちゃんねるの有志が一番勧めているVPN。中級者以上となるけど使いこなせば便利。昔から信用されている匿名VPN。あまり有名じゃないのもいい。二大大手からベスト12くらいまでの間なら筆頭。他は書ききれないので検索して欲しい

ベスト20以下だけどオススメ

トンネルベア

独特の自社IPを持っている。(これは非常にポイントが高い)接続は遅いが、サブとして使うならアリ。日本は渋谷接続とハッキリ表示されるのでレジデンスIP流用なのかしら。
トンネルベアというくらいで、本当に熊がトンネルを掘って接続される。つなげるたびにホッコリできる、世界唯一のVPNである。
普通無料お試しは日数なのであるが、ここだけは通信量なので、試すにはせわしない。女性向けVPNな気がする。UIは世界一。

ハイドミー

珍しくアジア系。ってゆーかマレーシアの独自VPN。フィリピンと近いので契約したことがあるけど笑っちゃうほど爆速であった。IPも国も少ないけど、契約者が少ないということはVPNにとってメリットでもある。基本は抑えているので、フィリピン住の人にはいいかも知れない。ストリーミング突破できるかは知らん。アイコンは何故かレオナルドダヴィンチを採用しているのでキモイ。名前もhide me というのがモヤる。まぁVPNなんだからこういうセンスでもいいのか。

だいたいこの四つくらい試してみるといい。やればわかるけど、VPNって各社サービスが全く違うので、自分にあったサービスを選ぶには、試しまくったほうがいい。
本当にサービスがまったく違うと言っていいくらい違う。

だからいちいち紹介しきれないので省略する。わからないなら上記からお試しで使ってみて、自分の要望にあったVPNを使えばよい。
他に業者は何百もある。自分にあった業者を見つけるのは大変だと思うけど、時間があれば探してみればいいだろう。

 

 

使ってはいけないVPN(時間の無駄なので初めからトライしないこと)

・大学実験系VPN

論外だし、接続がキレキレなので使い物にならない。設定が難しく初心者には使えない。さすがに名前をはっきり書くのは遠慮しておくけど筑波大学。

・日本のVPN業者全部。特に中国でつながる!等とアピールしている業者。世界中の顧客からのリクエストに答えられるほどの対応力がなく、日本人特化している時点でVPNとしての役割がなにもない。VPNは一義として反権力なので、本社が日本の時点で自由ではない。(わざわざ国の法人を選ぶ理由が無い)そもそも、いざ中国本土で使えないことが多い。

「中国本土でもすり抜けできます!」なんて宣伝している会社を、どうして金盾の担当者がニッコリ放置すると思うんだろう。
もしもあなたにほんの少しでも知能と海外経験があれば、この宣伝文句は営業だと見抜けるだろう。まぁもちろんすり抜けた実績もあるんだろうけど、私の経験からいうと、余計なことを言っている業者というのは、弾圧側からすると都合が良いと言える。自白してんだから当然だ。

・ホットスポットフィールド等無料系。聞いたことも無いアンドロイド系VPN全部。VPNを使うなら有料系を使って安心を買った方がいい。ここを節約するならVPN使わない方がいい

・サイバーゴースト
大手だが、過去様々な噂のあるVPN.いわゆる約束破りをした疑惑が何度もある。ノーログポリシーすらハッキリしていないし、有名なので混んでいる。大手だけど、ワイは勧めない。

 

VPNの選び方

・日本IPと、自分の住んでいる国のIPがあること
・有料で匿名性があること。アプデの際に生IPで接続しなくてよいこと
・当然安い方がいいんぬ 月200円くらいからあるんよ
・接続が早いこと!これはつながってからでなくて、つなげるまでの時間のこと。つながってからの速度を計測するのは無駄である
・接続端末数3つは欲しい
デスクトップ、ラップトップ、スマホで3つ埋まるんで、同時接続できる端末数は契約前にチェック。大手はだいたい3-5端末
・宣伝をあてにしない
VPNの宣伝文句は話半分。(特に日本語ブログ記事は読まないほうがいい)世界的大手のVPNベスト10くらいから選んだほうがいい
選べる国は少ないけど、小さい業者でも信頼できるところもあるんよ いろいろ試してみてほしいんぬ

・初心者に優しいVPNはイジレナイ。難しい機能も、理解してしまえば武器になる。ただし余計な機能テンコモリVPNは知識がいるのでバランスが大事。

 

オマケ

ウルトラサーフ

独特な挙動をするVPNがウルトラサーフである。ヤフー知恵袋なんかには「マルウェア」等と書いてあるが、それは接続時のブラウザトップページが世界のニュースに書き換わるというだけであって害はない。(つまり言論の自由の無い国でも、接続してすぐに西側ニュースが読める独特の仕様となっている)
このVPNは異常に早く、即アメリカのフェニックスに接続される。(このウルトラサーフの歴史は古く、メチャクチャ昔からある。多分スマホが無い時代からある)
このサービスは完全に無料で、無制限に利用できる。小さい実行ファイルのみで動作する。

このウルトラサーフは言論の自由を守るために設置されたと言われており、資金の出し手はアメリカ政府と言われている。アプリはワンクリックで起動する。途上国のショボイ回線でも、最低限の通信量で起動できる仕様となっており、言論の自由の無い国であってもビシバシすり抜けてしまう恐ろしい特性をもった、非常に政治色の強いアプリである。そして、それ以外でも(たとえばP2Pでも)使えてしまう。かつて東側マスコミが使ったとも言われるこのサービスは、今でもまだ生きている。
スマホ以前のアーキテクチャであり、デスクトップ中心の使い方にはなるだろうが、このようなサービスもある。(言論自由系サービスは他にもある)

このような化石じみたサービスは、一周回って令和の現代役に立つこともあるだろう。

※2023年3月27日追記

torrentは生IPで通信されることを確認しました

 

VPNは海外在住者の武器。積極的に使おう

断言する。VPNは怪しいと敬遠するのは馬鹿げている。ホスティングサービスがCDNを設定して、第三国の情報を読んだからといっても、それが何かなるわけではない。
(例えば日本語ブログがクラウドフレアでキャッシュされていたとして、一体誰が日本じゃないと非難するだろうか?)
「有料大手VPN」というのは、十年以上そういった不審、疑惑という分厚い雲を振り払うことに全力を尽くしてきた。著作権侵害書類は届いても開けません!なんていうことまで誇らしげに解説し、絶対にプライバシーを侵害しないと、くどいほどしつこいほどアピールして、有言実行してきた過去があるといっていい。

そもそもあなたのクレジットカード情報なんてのは、経由サーバに不備があればアッサリ漏れる程度の話。
わたしたちは国際空港やショッピングモールの防犯カメラで拡大されたらハイオシマイという世界で生きているのに、どうしてVPNを極端に警戒するのかわからない。これはほんの少しでもネットの知識があれば分かることだ。そもそも情報漏れが怖ければ、リアルだけでカードを切るのが一番良いのであるし、そもそもクレジットカードには保険がある。リスクよりリターンのほうが大きいではないか。となると失うものは(手間以外)無いではないか?そんなことに気を回すことよりも、さっさとVPNという利益を得てしまい、ワールドカップで大騒ぎして、ゆく年くる年を見たほうが、よっぽど日本人としての精神衛生上良いのである。

VPNは、契約してからの試行錯誤もあるし、ここがいいアソコはダメと業者を渡り歩くこともある。海外在住者にとって、この手の日本語情報はほとんどない。それを食い物にする業者もいる。時間がもったいないので、止めてしまう人もいるだろう。でもちょっと待って欲しい。VPNが安心だという前提があれば、少し想像の翼が広がって、あれもできるこれもできるとなるはずなのだ。

この記事を読んでVPNを契約したとしても、自分の思い通りにならない海外在住者もいると思う。しかしそれでも、知識と言う武装をして海外在住チャレンジをすることは、決して無駄なことじゃない。あとに続く新規移住者にアドバイスが出来るだけでも、誰かの笑顔になるのだ。