マニラの中の懲りない面々:2(オチ)

どうも最近アクセス数が増えている。なんかに紹介でもされたんだろうか?20倍くらいになっている。ありがとうござーます。
今日も楽しんでいってくだち!というわけで表題のオチを書こう。

実の事をいうと、この酒豪軍団についての続編を書くのは気が重い。あのあとのことは、思い出したくもないほどメチャクチャだったからである。
もう気力との闘い。脳みその限界を突破したほど大変だった。最後に帰国させるまでの間は、当時精いっぱい、私の智慧とコネを総動員したのであった。
今日はアフターストーリーを書いて、一応オシマイとしたい。今日もべろんべろんに酔っ払いながら書いてます。最後まで書けるかな

 

アフターストーリーも凄かった

酒豪軍団は、わたしに何度かアテンドを依頼してきたんだけど、わたしはノラリクラリと断っていた。お金じゃないのである。いやお金もあるけども!
JTBなどのパックツアー相手など話にならぬ、マニラの「プロのガイド」でも、この軍団は制御しきれなかったであろう。

わたしにしてみても、この軍団と付き合うのはゴメンだった。気のいい連中とは思うが、事故を起こす可能性200%確実となると、後始末を考えて、先手先手で
立ち回りを考えないと無事に終われない。そう思うと割に合わないという計算があった。彼らがチップといって渡してくるカネでは回らないのである。
わたしはそのへん冷静である。

では、軍団がおとなしくしていたか?と言えばそうではなかった。なんと私の知らないところで、勝手にマニラにバンバン渡航していたのである!!

いや・・・厳密に言えば、勝手にというのは語弊がある。日本国民は、誰でも勝手にフィリピンに入国してよい。私の許可など要らない。
しかし、である。余りの立ち振る舞いに腰を抜かすほどの連中である。
誰かが首に縄をつけなきゃなるまい?その誰かっていうのは俺であった。

 

偶然の出会い

私は別件で、当時マニラ最高級と言われるKTVに出入りしていた。(※当時526はまだ無かった。念のため)
その日もそこにいたのであるが、突然わたしの席に、ワインが届けられたのである。しかも一番高いヤツである。当然フルボトルである。
わたしが戸惑っていると、さらにもう一本追加で運ばれてきた。どうやら連れの分ということらしい。

—-誰だ?と聞くと、その最高級KTVのVIPルームに・・・ああ。あの酒豪軍団が居たのである!!あの、懲りない面々が!!
わたしの連れは、VIPルームの酒豪軍団を、完全に893と勘違いして、即!帰ってしまった。
『会社の規定!同席だけでも首が飛ぶんで!』と強い態度で逃げてしまった。うーんコンプライアンス。
訳も分からず、わたしは客を失ったのである。

ま、仕方ない。まだなにも起こってないのに、ビビって逃げたヤツのほうこそ軽蔑する。マニラに住んでる男性なら「こういう状況」というのは必ずある。
ソイツは会計して逃げたので、私は益々軽蔑した。逃げるなら「這う這うの体」で逃げろよな。領収証貰って「アブナイ目にあった」も無いだろう。

まぁいいや。ひとりになったわたしはお礼にVIPルームに入ると、もう酒豪軍団は私のことをアゲアゲで接してきたのである。

なんだこれ?ザッと見渡す。男性多い。随分多い。見ない顔が3.4人いる。聞けば会社の従業員ということであった。
酔っ払いなので要領を得ない。
「そんで相談ゴトがあるんだけどさぁ・・・二日酔いには?」ソルマック!ウギャーッハハハハハハハ!!!

途中でカラオケや踊りも入るので、なかなか状況が分からない。

翻訳するとこういうことであった。
まず、わたしの知らないところで、今回マニラは三回目。つまり都合四回来ていたことが分かった。
海外に詳しい新人というのは、前職の社員旅行でハワイに行ったことがあるという社員であった。
そして隣にいるKTVの女の子は、彼の子供を宿しているというのである。

ハァー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新人クンの訴えかけるような目。もう救世主が現れたかのような顔。忘れられない。
わたしが居なくなってから、彼らは全く同じルート「グリーンヒルズやグリーンベルトで時間を潰し、夜はKTVで遊ぶ」ということをやり続けたそうである。
カネだけはある連中なので(※日本での本職はかなりマトモな、健全中小企業のトップである)ある意味マニラでは無敵といっていい。

コンドも借りていたし、ヤバイ日本人との付き合いも芽生えていた。(当時はそんなことがよくあった)
どうすんのコレ?

袖振り合うも他生の縁というけど、本質的には気のいい親父たちである。同じ日本人でもある。
このまま行ったら手ひどい打撃を受けるのは目に見えている。いや絶対そうなる。100%そうなる。
彼らをマニラに連れてきたのはわたしなのだ。

初海外。初フィリピン。初マニラ。そういう体験をさせたのは誰か?オレである。

 

「ハワイに行ったことがあるだけで社員になっちゃった君」は、もうKTVの薄暗い席でさえも顔色が悪かった。
日中は仕事をして、夜は国内で酒!マニラの自慢話を聞かされ、次回は同行!それを三回も繰り返し・・・酒は飲みっぱなしってもんじゃない。
仕事をしているときだけが休肝日という有様であった。小さい娘がいて、やっと決まった就職らしい・・・
年齢を聞いたら私より年下であった。白髪交じりなのに、まだ30になったばかりだという。エッ

なんとかしてください
もう自分には無理です
手一杯です
辞めることばっかり考えてます
社長には恩があって・・・自分は高校中退なんで・・・

お願いします、お願いします、お願いします・・・

うわー・・・俺に代わってこんな要員、いや生贄がいたなんて・・・

クッタクタの財布に入った娘の写真。「パパ頑張って」と言っているようだった。

—でも俺には関係ないことなので突っぱねた。だってどうしようもないのである。
アンタが海外要員としてマニラに来ていることなんて、今偶然はじめて知ったんだし、職業選択の自由は担保されている。まだ30そこそこなら辞めちまえば?
すまんが私はなんの同情も覚えなかったのであった。

問題を切り分け整理する

それにしても状況どうなってんの?
ハワイ君に事情聴取したところ、とにかく知らない間に、酒豪軍団は、マニラで伸び伸びしていたようだった。
彼らは当時所属していたわたしの会社のお得意で、一応別の担当者が付いていたハズなんだけども、ソイツは処世術がうまくて、日中しか同行していなかったことが判明してきた。
つまり夜の責任を放棄していたのである。確かにマニラの夜は営業時間外である。客が夜にどこにいこうが、知ったこっちゃない。

ははーん、だからコンドを借りることができたんだな?と腑に落ちた。日中やることないから時間潰しに不動産巡りしたんだろう。
酒豪軍団にも話を聞くと、全員もうKTVの女性とイイ仲になってしまっていることも分かった。そしてひとりは妊娠していると。

さてどうすりゃいいの・・・?

こんな連中でも、お腹の子供は日本人で(も)ある。まだ生まれてないけど。
国籍に関係なく、俺が判断することでもない。いや、誰がなにを判断できるっていうんだろうか?

こうやって文章で書いてもゴチャゴチャしている話だけど、当時の現実は、これのだいたい一千倍位ゴチャゴチャしていた。
絡まった糸が圧着されて、カネとオンナと仕事と建前、複数の事情とクニの嫁の言い訳と、本業と欲望と自慢と縦社会と対外が何層にもあって、
軍団員全員が個人的悩み(重い)を抱えており、私一人ではどーにもならん状況になっていたのである。
本業が儲かっていることだけが救いであった(大事)

 

ひとりひとりオンナを呼び出す

さて。糸をほぐすにあたって、酒豪軍団のご指名の女性について、わたしは後日ひとりひとりから話を聞くことにした。面接である。
男が悪いのか?いいやそうじゃない。半分は女性の部分もある。同意の上なんだから。

まぁ聞いた内容についてはご想像にお任せするとしか言いようがない。

 

母は強し

ほとんどは面接で撃沈してくれたんだけど、ひとりだけは真剣だ!結婚する!と言い放った女性がいた。妊娠していた子である。
私が一番要注意だなと思っていた女が妊娠していたので、どうしようかと思った。入れ墨と乳だけが偏差値を超えている子であった。

「オロスオロサナイ」という話は、フィリピンではキホン出来ないとされている。
フィリピンでは妊娠したら産むのが当然すぎるほど当然で、そもそもオロスというオプションが無い。彼女は当然産むことを選択していた。

しかし産んでもらうと、これからの話は無限にややこしくなっていく。(そのうちに別の日本人から智慧を付けられるからだ)

—本当にお互いの子なのか?というところからはじめた。

「知っていると思うけど、俺はアイツと友達だから、お前の家の場所まで全部分かっている」(嘘である)
「日本では、お互いの子以外で日本国籍と嘘をついた場合死刑になる」(嘘である)
「日本で出産しないと日本国籍貰えない。アメリカだってそうだろ?」(嘘である)
たんに揺さぶりをかけただけだったけど、彼女は簡単だった。彼氏は五人ほどもいて、ほんとは誰の子か分からないという。素直である!
でも、妊娠したからには産みたいという。そりゃそうだ。ファイブポケット(全員に父親だといってお金を引っ張れる状況)なんだから。
それに生まれてくる子になんの罪もない。

そもそも本来、俺カンケーないのに、なんでこんなことしてんのか・・・

 

堕胎

国籍なんかどうでもいいし、不幸な身の上であっても、生まれてきたからには可能性がある。この議論は世界を二分するほどなので、答えはない。
彼女はどうしたか?出産までの間は無収入である。そこが一番のポイントだった。

フィリピンでは、堕胎手術というのはできない。妊娠初期に流産させるしかない。
この方法をブログに書くことは出来ないが、ありふれた定番のやり方がある(比人なら知っている)その方法で『結果として流産させた』。
費用は5000ペソほどである。それにお金を付けて解決した。

この内容に文句をいうヤツはたくさんいるであろうけど、じゃあどうすれば一番良かったのか教えて欲しい。
当時の私は、これが精いっぱいであった。

 

その後

これは氷山の一角で、酒豪軍団が数回渡航した「爪痕」は他にもあった。私は知り得る限りで解決した。そしてまた今後は解決しない宣言もした。
その後も酒豪軍団は、ノリと明るさでマニラを満喫していたようであるが、その度に私は問題解決をしていった。
マニラの揉め事解決については、この団体だけで鍛えられたといっても過言ではない。その紹介の紹介、みたいな良く分からない人らのトラブル相談にも応じていたからだ。

もっとも、私はもう、そういうことはしていない。お金にならないからだ。
マニラでトラブル解決をしても、日本人は対価を払わない。問題が解決されると財布のヒモは急に絞られて国に帰ってしまう。
そして「男と男の付き合いなのにカネカネ言ってくる」と触れ回られることが多くなってきたのでキッパリ止めた。
「日本人同士お互い様」とよく言うけど、それは住んでいるひと同士の話である。トラブル解決なんて赤字のことが多い。
(私はトラブル解決で黒字になったことが一度もない)それで陰口叩かれて、「貧乏人」だの「結局はカネ」だの言われるのである。

—いやそうだよ?マニラのトラブルは結局カネだろ?そんで、アンタの起こしたトラブルを、どうして俺らが立て替えてんの?
そして国に戻ってから、ヤクザだの反社だの、こっちが反論できないのをいいことに好き放題書き散らす観光客が一定数いるわけだ。

これはマニラ在住で長い人の共通体験でもある。良かれと思って日本人を助けると、安全な本国に戻ってから好き放題批判されるのだ。
批判された側はかなり傷つく。

清濁併せ吞んだ男同士の付き合いだったんじゃ?
本国に戻れば豹変して「マニラの日本人要注意!コイツです!写真アリ!」なんてSNSに投稿されるのだ。ほとんどテンプレに近い。
「グルだった!KTVに連れられていってオンナが妊娠したといっていたのが実は愛人!」こんな調子である。
テメーのやったことを棚に上げ、在住者を、ただマニラに住んでいるだけで貶めて、国に帰ったら豹変する男というのは多い。物凄く多いといっていい。

こうしてますます、マニラで日本人を助ける日本人は減っていくのだ。

断っておくけど、俺ら在住者だって、いつでも日本に戻れるんだからな?日本に戻るのに上陸許可要らないんだぜ?
不思議なことに、日本人というのは、在住者はいつまでもマニラにいると思い込んでいる。そんなことないのにね。

 

またも偶然の再会!

嘘だろと思うかも知れないが、酒豪軍団と、日本で再再会したのである。事実は小説より奇なり。しかも場所が悪かった。裏カジノである。
わたしはカジノが好きではないので連れられていっただけなんだけど、まさかそこに酒豪軍団がいるとは思わなかった。だって日本の辺鄙な場所だったからだ。

念を押しておく。私は日常で、いつでもカジノに行ける国に住んでいる。どうしてわざわざ日本の裏カジノに行く必要があるのだろうか。
まったくの偶然が続いたのであった。入った瞬間、お互いがお互いを認知した。ニヤリであった。

彼らは私と勝負したんだけど、思うがままに負けてくれた。

マニラでの不始末の謝礼であろう。まさか日本で返してくれるとは思わなかった。

 

冬の寒い日だった。お互い一言も話さないまま、同時に裏カジノから外に出ると、酒豪軍団と私はラーメンを食べていた。
何故か知らないけど面白かった。みんな口火を切りだしたい。「あれから」のことを話したい気分だった。
でも誰もクチを開かなかった。

とうとうラーメンを食い終わると、誰かひとりが『飛行機の便所で一服するの、タマンナイよな』と呟いた。

テメーいい加減にしろよ!私は笑いながら、この愛すべき馬鹿達を好きになっていた。