マニラで賃貸(4)コンドミニアムを借りる

マニラでコンドミニアムを借りるというのは、もっとも日本人が選択する手段だろう。
私の友人知人のほとんどが、マニラのコンドミニアムで生活している。マニラに住むということは、まずコンドミニアム(マンションのこと)に住むことと心得ておけばよい。

マニラのコンドミニアムは、おおよそ最低一万ペソから、上限は天井知らずである。
どこも似たり寄ったりのようだが、そんなことはない。選び方はある。

ホームズがワトソン君に「それはだね?つまりこういうことだよ」と解説するように、コンドの選び方は十全に知っておくべきなのだ。
あなたが軽く払う2万ペソ3万ペソという金額は、一般比人にとっては目もくらむ大金なのだから、それに見合ったサービスを受けたほうがいい。

 

新しい物件を選ぶ

まず第一に、新しいコンドミニアムを選ぶこと。古いコンドは、何十階であっても、ちょっと置いておいたドーナッツにアリがたかる。
比のアリ害をナメてはいけない。噛まれて病気になることもあるのだ。新しければ新しいほど、アリの巣は上層階にたどり着いていない。古いコンドほど虫害があると知るべきだ。

 

エレベーターの数を数える

エレベーターの稼働状況を、見学時にスルドク見なければならない。

大規模コンドで、エレベーターが六基あったとしても、信用してはならない。どうせ一基はなにかの名目で潰れ、一基は動かず、残り四基のうちふたつは上層階専用となれば、実質使えるのは二基だ。それが朝一斉に、何百人の上下を繰り返すのだと想像してもらいたい。ヘタすると、そのうちもう一基も潰れることが多いし、ほったらかしにされていることもある。ペット可ならば、エレベーターで獰猛な犬が狂ったように吠えていることもある。

エレベーターの状況は、生活に直結すると思った方がいい。地上に降りる時間が長ければ、それだけ家にいることになる。それは機会を損失することなのだ。

私は20階以上のコンドミニアム、エレベーター1基という感動的な物件を見たことがある。

住人に聞いたら、下に降りるまで15分。家にいくまで15分かかるという。それが毎日だという。一基しかないから、20階の住人は、一度エレベーターに乗ったら、19回ドアが開く。一階下の19階の住人は、20階から降りてきたエレベーターの定員が一杯だと知って諦め、扉が閉まる。ハイ下に降りて、18階の住人が一杯だと知って扉がしまり、17階の住人が一杯だと知って扉が閉まるのである。比人は上ボタンと下ボタンを両方押す人間も多いので、一基しかないエレベーターは「各駅停車」だ。それを階数分繰り返して地上におりると、地上には上に上がりたい住人が行列している。非常階段を使うひとも多いという。いくら場所が良くても、エレベーターの数の少ない物件は避けるべきだ。

 

コンドは低層を借りるのがコツ

マニラのコンドミニアム(日本でいうマンション)においては、低層階ほど高くて人気があり、高層階ほど安くて人気がない。夜景キレイ等どうでもいいのだ。日本とはまったく逆であることは、知っておいた方がいいだろう。

やはりマニラで起こる頻繁な停電については、計算に入れておくべきだろう。停電すれば水道のポンプが止まる。バスタブを準備できなければ、コンドでは生活用水がすぐに出なくなる。コンドで停電したら、すぐに蛇口を全開にして、なるべく水を貯めておかないといけない。停電が長引けば水の無い生活となるのだ。私の経験上、電気は耐えられるけど、長期の水ナシは絶対に耐えられない。

「いやいや・・・いまどきマニラのコンドなんて、どこも非常用電源あるんですけど?」という人は幸せである。
限られた非常用電源で生み出された電気は、最低限の明かりとエレベーターを動かすためのものだけど、住人は電気を盗む技術を確立しているからブレーカーが落ちてしまい、今度はエレベーターに閉じ込められるひとが出てくる。

次に火事だ。火事になったとき、マニラのコンドは間違いなく死ぬだろうという構造になっている。日本と違って、非常階段がビル内に設置されていることが許されている上、ベランダからの逃げ場も無い。煙がしたから上がってきた場合万事休すとなる。低層階に住めば住むほど、火事の際助かる可能性が高い。

同じことが地震にも言える。マニラで地震が起こった場合、コンドの高層階はメチャクチャ揺れるのだ。
これは一度体験したら生涯忘れられないほどの恐怖を覚える。

だから停電対策とエレベーターの基数、プールの場所と水量は、まず最初に見るべき重要箇所だといえる。
(なんのことはない、コンドのプールというのは非常用の水汲み場といったほうが正確だろう。比人はそれを分かっているから、マンションの下層下層に住みたがるのだ)

 

ネットで物件を探すのは参考程度

インターネットで物件を探すこともできることはできるが、あてにならない情報が多い。
2BRだと書いてあっても、実際には1BRをカーテンで区切っているだけだったり、平米数が合っていなかったり、書いていなかったり、貸す人も知らなかったり、知っていても間違っていたりする。
入居が決まっている物件が、何年も掲載されっぱなしで放置されていることも多い。ネットの情報は、写真を見る程度の参考にしかならない。

 

家賃相場

コンドの家賃相場は、あまり心配しなくて良い。便利なコンドは狭くても強気の家賃だし、不便なコンドは広くてもお手頃だ。おおよそ500ペソ単位で相場が形成されている。これは外人も比人も平等だ。同じ間取りの隣の家と、あなたの契約額はほぼ同一だ。
マニラ市内のコンドミニアムで、もっとも安いタイプで、だいたい10000ペソ程度からある。あとは条件によって上がっていく感じだ。
駐車場は、ほとんどの物件で一律5000ペソと覚えておくといいだろう。

 

借りる場所

場所はどこがいいか?比で一番のブランドコンドはロハス通り。アメリカ大使館や比外務省が並ぶ最上級立地である。日本大使館もロハスである。伝統的金持ちが住む場所といえる。旧コスタルモールからイントラムロスをつなぐ道の家賃相場はプレミアがある。

一般的に私たちが選択しやすいのがマカティのコンドだろうが、かなり高い。単身者なら、最低25000ペソ程度を準備できればいいだろう。
わたしはあまり勧めない。最初に住む地としてはいいかもしれないが、何もフィリピンらしさを感じられないだろう。だったら割り切ってBGCに住んでしまったほうがいい。マカティのコンドは全体的に古いし、車との相性が抜群に悪い。
マカティはマニラ最大の中心地であり、日本人が一万人以上住んでいる場所ではあるが、さほどの便利さを感じられない。香港に住んでいるような感覚、といえばいいだろうか。フィリピン広しといえど、レッカー移動されるほど厳格に法律を適用される場所でもある。外人に住みやすいのは認めるが、海外らしさも無い。物価も高いし、飽きるのも早いんじゃないかと思う。

マニラに住むなら、マンダルヨン、サヌアンあたりはオススメしたい。マカティのほんの少し北の地域だが、家賃もグッと下がるし交通の便も良い。
リトルトーキョーあたりもタクシー圏内だ。
マニラで一番住みやすいのは、おそらくオルティガス郊外あたりかグリーンヒルズ近辺じゃないかと思う。

 

日本人同士の貸借は慎重に

コンド契約で慎重になりたいのは、日本人オーナーの場合である。
実はわたし、日本人オーナーのコンド話で、ロクな話を聞いたことが無い。うまくいった話も多いのだろうが・・・

日本人が日本人に貸す場合、相場を無視した安値のことが多い。
共益費を何年分も滞納していることが多い。(それを清算してくれというのが条件だったりする)
オーナーが日本人というのは気安いのだが、だいたいが嫁(か旦那)の名義や共同名義になっているパターンだ。いわくつき物件ということだ。
貸し手が比に入国できない場合もある。鍵が郵送で送られてきたり、家賃は日本の口座に円で払ってほしい等と言われることもある。
日本人や比人関係者が鍵を持っている場合もある。
よく事情を聞いて、不安があったら周囲にもよく相談をしてから決めよう。

うるさいセキュリティはよいコンド

マニラのコンドは、規則でがんじがらめになっている。日本のように、友人を気安く招待できないこともある。
知人を呼んだらID提示を求められ、荷物をひっくり返され、あなたに直接連絡が入って部屋にいれていいかと尋ねられることさえある。
おかげでインターネットの修理業者が部屋に入れない、エアコン設置に来た人がIDを持っていないので引き返した、宅配ピザはゲートまで自分が取りに行かなければならない、といった不便を強いられる。かなりストレスだ。
しかし、このようにウルサいコンドほど安全であると知っておこう。

駐車場料金

コンド自体と契約をした場合、駐車場は別料金となる。
部屋のオーナーと契約した場合、オーナーが駐車場をコンド内に持っている場合、駐車場代込の場合がある。
マニラの駐車場相場は5000ペソなので、年間で10万円以上の差額が出る。

ゲストパーキングの有無

客が車で来た場合、マニラには止めておく場所が無い場合が多い。ゲスト用パーキングの少ないコンドは、車で来てもらうことができない。
特にマカティ、マンダルヨンのコンドには、余分な駐車スペースがなく、周辺に有料駐車場が無いことが多い。

 

隣人

両隣がどんな人物であるか?は軽く聞いた方が良い。騒音で眠れないことがあるからだ。ピアノやギターの練習をする人もいる。
隣人の生活によっては、ゴキブリやコバエが部屋に侵入してくることもある。

コンセントの数を見ておく

驚くべきことに、コンセントの数が全く足りないコンドというのが一定量存在する。部屋にソケットが一つしかないところもある。
こうなると、配線が見苦しいことになる。

キッチンがあるかを見ておく

キッチンや水回りがほとんど無いコンドというものがある。当然あると思い込んでいて、内見もしたのに、あれ?あの家、台所ないぞ?という物件がある。学生向けのstudioタイプの部屋に多い。

シャワーの構造を見ておく

給湯器が設置できるかどうかは、必ず確認しておくこと。設置できないタイプの場合、当然だが毎日水シャワーとなる。
すでに付いている場合、湯温を必ず確認すること。(ぬるま湯しか出ない場合も多い。これは高級コンドでも起こりえる)日本人好みの熱いシャワーをたっぷり浴びれるかどうかは、毎日の生活の質に直結する。忘れず確認しておこう。

 

家具付はトラブルもある

家具がついている物件は魅力的だ。すぐに生活を開始できるし、人に自慢したくなるようなセンスの物件もあるものだ。
しかし家具付物件は、退去の際に嫌な思いをすることが多い。お皿やフォークが足りない、ベッドが壊れている等々難癖を付けられ、デポジットから差し引かれることがあるからだ。そしてまた新居も家具付きを選択するしかなくなる。これが嫌で、家具ナシを選ぶ人も多い。家具ナシのほうが安いので、新品の生活家電を揃えたとしてもお釣りが出るからだ。

共益費の確認

大手不動産会社のコンドは、安心だが共益費がかなり高い。法外といっていい。
共益費は床面積に基づいて計算されるため、余計な広さの物件を選択した場合、共益費だけでナンゼンペソと請求される。それも毎月だ。
また、バランガイ費、ゴミ処理費等と上乗金額が設定されている物件もある。借りる前に説明を受けるようにしたい。

ネットが引けるかどうかの確認

これは絶対に行うべきだ。ネットナシという物件が、マニラ近郊には存在する。
ネットが引けない物件の場合、ホームwifiという携帯電話網を使ったインターネット回線を利用するしかなくなる。

 

携帯電話の電波確認

見落としがちなのが、ケータイの電波が正しく届くかどうかだ。マニラのど真ん中であっても、電波が頼りない地域はたくさんある。

天井の確認

雨漏りしていないか?天井の輪染が無いか、見上げて確認しておこう

 

室内電話はあるか?

受話器を上げると、階下のセキュリティに直結している電話はあったほうが良い。安全面の他にも、荷物の受け取りや宅配の来訪確認等々、なにかと使うことが多い。

 

停電時の非常灯は点くか?

比では停電すると、室内は直ちにバッテリー駆動の明かりが点灯するようになっている。ただし、この機械、中を見ると呆れるほど安っぽい作りとなっている。故障していることが多い。新品交換させるなら入居時が良いので動作チェックをしておこう。

 

ゲスト用トイレはあるか?

一階や、プールなどの共用部分に、男女のトイレはあったほうがよい。アレは客向けではなく、自宅のトイレが壊れたときに使うものだ。

ポストはあるか?

ポストの無いコンドは、実は多い。無いコンドの場合、一階で預かってもらい、届いたら教えてくれる仕組みとなっている。
いちいち「郵便が来たぞ」と電話が来るので、有難いけど小うるさい。

洗濯屋は近くにあるか?

近所にコンビニなど無くても良いが、洗濯屋はあったほうがいい。ベランダでの洗濯干を禁止しているコンドが大多数だからだ。
乾燥機があれば良いが、無ければ買うしかなくなる。それでも洗い物には苦慮することになる。
比のクリーニング店は、日本と比べて格段に安いので、一般市民もお金を出して服を洗ってもらっている。