ヤバイ炒飯を見つけてしまった話

ワイの読者の方が、わざわざマニラまで来てくれたのである。しかも赤ちゃん連れである。他に用事があったとしても嬉しいのである。
いろいろと感想を聞かせてもらうのは励みになるのである。

過去に書いた「スカイケーブルのメンテナンスを一発で呼んで復旧させる方法」については、勝手に意訳して英文投稿したらしく
外人にバラしました等と言っていた。まぁ誰かの笑顔になるなら、筆者としてはとても嬉しいのである。そんな子連れ夫婦とお会いした。

見知った仲である。彼らは元在住者なので、質問攻めに合うこともない。楽しい時間を過ごせると思い、わたしは楽しみにしていた。

今回はマニラに来たはいいものの、歩けるようになった元気ベイビー同伴ということで目が離せない。
じゃあテイクアウトの食事で部屋呑み、ということになった。わざわざ外出などせずにグダグダと、とりとめのない話でもしようという魂胆である。

何も考えずに買った炒飯

わたしはダンナと一緒にブラリ中華料理店に立ち寄って、テイクアウトで海老炒飯と、茄子の炒め物、空芯菜を買った。
夕食とツマミである。3人前で1000ペソ弱。マカティの相場感からすると、ハッキリ安いといっていいだろう。

はじめて立ち寄った店。正直、店員のレベルは低かったし、何も期待していなかった。店の名前も覚えなかったし、一枚の写真さえも撮らなかった。
立ち寄った理由は、単に安かったからである。
私たちはただ、コロナ明けの再会を祝し、くだらない話をして、互いの無事を確認し、雑談をしたかっただけであった。
中華料理なら、あまり下手なものは出てこないだろうという予想もあった。夫婦は元在住者なので、いまさらフィリピン料理でもない。
それにこれからビサヤの田舎に行く予定だったので、これから飽きるほど比の料理は食える未来が想像できた。

そんなわけで、部屋に戻っても、テイクアウトの中華は机に置かれたままだった。わたしたちはペチャクチャとお喋りを楽しみたかった。

三々五々ビールを開け、ツマミとして中華を皿に盛った。

するとヒトクチ食べた旦那は叫喚を上げた。アレ?なにこれウマイ。
なんだこれちょっと食べてみてというので食べるとウマイ。
あれ?これウマイねw 嫁も食べてみる。あ、ウマイという。

人はウマイ物を食べると、ウマイしか言わなくなる。なんだこれウマイね。いやーこれウマイわ。我々はウマイウマイ言いながら、黙々と海老炒飯を食べた。
二人前といっても中華なので、それなりの量が入っていたんだけど、すぐに売り切れペロリである。茄子の炒め物と空芯菜は立場を失い、タッパーに余ってショボくれていた。

空腹を満たした私たちは、存分にこの海老炒飯を褒めた。
食い物というのは、ウマイとなれば人は賛辞を惜しまない。

「マニラの、そのへんの店で買った200ペソ台の炒飯」は、我々三人の胃袋を、大いに満たしてくれたのであった。

いやーーー・・・・これはヤバイね。
「マニラで一番ウマかったです・・・」そんなにか!
「マカティに居たのに気付かなかった・・・うわーこれはウマイわ」

いや実際ウマかった。マニラで食べる炒飯はパサパサなのであるが(当然そうなる)この中華は米がモチモチしているのだ。
モチモチしている炒飯というのは難易度がプチ高いのであるが、それが解決されていた。
そこに海老の風味がブレンドされていて、ちょっとした高級感もある。
そしておそらく、野菜投入のタイミングが計算されていて、シャキシャキ歯ごたえ感のある風に仕上がっているのだ。
もうこんなんいくらでもイケるわ、という炒飯であった。

本来ありえない炒飯

マニラについては、だいたい満足度と価格というのは正比例している。ウマイものを食いたければ、カネを出さないといけない。
お買い得なんだけどウマイ!という店は、まず巡り合うことは無い。だからこそ、この260ペソの炒飯という偶然の巡り合わせに、私たちは盛り上がった。

日本人なら誰だって、米を食うシーンが、旅行のどこかで必要である。
だから自動的に買った、ただ腹を満たすためだけに買った『メニューの中で一番安い炒飯』に、一体何の期待があるだろう?
いかにも味が濃そう、辛そうなオカズ「茄子の炒め物」の添え物として買っただけで、なんの期待もしていない炒飯であっただけに感動があった。

そして、箱にギッシリ入って260ペソという価格も良かった。260というのは高いかもしれないが、マカティのど真ん中である。
漁火フライドポテトが320ペソの世界であることを考えると、やはりアタリを引いた感が強い。

別に我々はお金が無いというわけではないけども、この夫婦は節約を楽しみにしたいという人生設計をしている個性があったので、なおさら盛り上がった。

繰り返すけど、マニラでは、高いカネを払えばウマイものを食える。フィリピンといってもマニラは首都であり、天井知らずの金持ちだってゴロゴロしている。
その首都マニラの中心地といえるのがマカティである。基本的に高くてもマズいシロモノが出てくる可能性は大いにあった。

今回あった夫婦は若いし、トラブルを楽しめる性格だし、自力で問題解決できる人だったので、私としても気が緩み、適当な夕食を選んでしまった。
本来反省すべき行為である。

だからこそ、この260ペソ海老炒飯は大ヒットだった。
初出場、9回裏の甲子園思い出代打が満塁サヨナラホームランを打ったようなものである。

13日の金曜日だというのに、夫婦は日中の手続系も上手に進み、夕食は海老炒飯で笑顔になれた。

マニラでこんな風に話が進むことってあるだろうか?あるのである!!
日本にいる間、どうしようこうしようとあれこれ不安になり、悪い現実ばかりを想像し、行ってみるしかないなと渡航したところ思いのほか上手く進んで、
枝葉の懸念も「案ずるより産むが易し」とばかりに解決し、思い悩んだ手続は即日完了して相手から喜びの連絡が来て、オマケに海老炒飯がウマかったなんてことが!

お金を失ったらどうしよう?追加書類の英訳となったらどう動こうか?と、寝返りを打ちながら眠れない夜を、もう過ごさなくていい。
紙を剝がすように全てがうまくいったところに海老炒飯である。夫婦にとっても、わたしにとっても、思い出深い食事となってくれた。

こんなこともあるのである。毎回毎回ウンザリするマニラであっても、

『考えたとおりに全てがうまく行って、思いがけないラッキーも会った』ということもあるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下余談)

まぁこれで終わればキレイな話なんだけど続きがある。こっからは余談。

キモチよく解散したあと、わたしは別の日本人らと合流して、久々に灯のともったブルゴスをうろついた。
初対面の方がいたんだけど、それも偶然フォロワー様であった。

 

急に現実に引き戻してくれるマニラのタクシー

 

いい気分でタクシーに乗ったらメーター押す押さないでもめた。いつもだったら降りるんだけどソイツは止まらないので俺は切れた。
互いが脅迫しあうほど険悪な車内となった。200ペソという。

目的地は2キロも無かったので、言い合いをしているうちに着いてしまったのであった。

こういうとき、止まらずにメーター押さないヤツは、勝手に私が押すんだけど、今回は違った。メーターが壊れていたので、そもそも動かないのであった。
ドライバーは全部言い値で営業していたようだ。ボッタクリの中でもかなりベテランである。

こういうヤツは「日本人もおそらく毎週複数被害に遭っているだろう」と想像がつく。
日本人だからといって大人しいヤツらばっかじゃねぇんだよ。次に乗る日本人がボッタくられない為には、どっかでナメられないようにしなきゃいけない部分がある。
いや日本人に限らない。このタクシーは走ったらアカンのである。

これは普通に考えれば「海外で危ないナンチャラ」である。銃を突き付けられたら財布渡しましょうみたいな、キレイな情報ばかり氾濫しているけども、状況や安全によっては抵抗を選択することもある。マカティでタクシーの後部座席に乗ってる状況なので、私は抵抗を選択した。細かい解説はしないけど、自身の安全を考えた上で言いなりになる理由がないと判断できたからである。

私が切れたのは理由がある。「タガログ語分かんない」の一言で火が付いてしまったのである。
マニラでタクシー転がしてタガログ語分かんない?上等だよ!となってしまったのである。

メーターは壊れている。降ろせといっても止まらない。タガログ語は分からないだぁ?よく言えたもんだな。
ほーうそうか!じゃあタガログ語で行ってもお前理解できないんだな?
これまで比人の言い訳を聞いたことは数あれど、よくも言えたもんだ。カリワもカナンも分からないなら運転免許取れないな!
(※比の運転免許には語学規定があります)

「海外では危険に巻き込まれる場合があります」などという、キレイな安全情報はいくらでもある。

けど、どっかで誰かが、こういうタクシーを排除しないと、いつまでたっても日本人が巻き込まれるというのもまた事実である。
誰かがこういうヤツにお灸をすえないと、いつまでたってもマニラのタクシーは良くならない。

そもそも、押し問答をする前はタガログ語で話していたんだから、急に母国語が分からないというのはいかにも苦しい。
私が怒っているのは理由があるのだ。

どうして数百メートルで200ペソ払う必要があるのか?
あなたの名前はなに?
メーターを押してください

と、バカでも分かる位に英語でゆっくりと話して、これ見よがしに動画撮影をしてやった。
「お前ペナルティ初めてか?」「フーン、一回目のペナルティは5000ペソだからな」と若い兄ちゃんをイジりはじめた。
この手のトラブルは三振制になっていて、初回は5000ペソである。外人通報は圧倒的有利で、わたしは途中から動画撮影していたので言い訳できない。

それでも、運転手は絶対にボッタくるという強い意志を示した。

わたしは行先をマカティ警察に変更した。

こんなことマカティ警察は相手にしない。するわけない。
それを承知で、行先を警察署にしてやった。ただの嫌がらせであるが、私はタクシーの客であり、どこに行先を指定しようが私の勝手である。

わたしは精一杯の脅迫をして、動かぬ証拠も撮影したんだけど、オチが笑えた。
開き直ったのか、私が出したカネ(これは証拠のために大きいカネを出して、これ見よがしに撮影している)のお釣りを出さなかったのである。

お釣りを払わなかったらペナルティがあるぞ?いいのか?運転手の指は震えていた。お釣りは50ペソである。

私はマカティ警察署前で言い値を払った。
そして通報すべきかどうなのか。酔っぱらった脳みそで、ひとり考えたのであった。