マニラリタイヤメントの懲りない面々

この手の記事はなんぼでも書けるので、また書くことにしよう。

私も以前は、カリワもカナンも分からない、純情な在留邦人だったので、こちらに住んでいる年長の人々は無条件で尊敬していた時期があった。
特にリタイヤメントの人々は、人生を海外と日本で過ごすわけで、ちょっとスゲェとさえ思っていたことがあったのである。

わがまま放題のリタイヤメントオヤジ

とにかくリタイヤメント親父(※略称:リタオヤ)というものは、「説教と無理難題と頼み事」だけをしてくる人種である。
なかにはそういうことをしない紳士もいるのであるが(それは私も歳を取ってきたので「されなくなった」というほうが正しいのかも知れない)

いやもうマジで、在留邦人の50.60代は、心から本当に留意してほしい。自分は老害になっていないか?と問いかけて欲しいのである。

 

☆彡

 

まず、多かったのは「鍵とペットとオンナ」である。三点セットである。

リタイヤメントオヤジというのは、日本と海外を往復する悠々自適ライフなるものをやっている。それは別にいいのであるが、これ、ひとりでは出来ないのである。

まず鍵だ。リタオヤは、帰国する度に、泥棒に入られるんじゃないかと心配するのである。(実際に入られる)
それで、『時々様子見てほしい』と、家の鍵を渡されるのである。

これがもうトラブルの元。なんでかっていうと、モノが無くなったら俺のせいにされるからである。

次にペットだ。犬猫を預けるひとがいない。そんなもん近所に預けて銭でも払えば済むのに、そういうコネは無いので私に託すのである。
(それは無理ですと言っても無駄なので、私は比人に又預けをしていた)

最後に女である。リタオヤは、ほとんどの場合日本とフィリピン両方にオンナがいるので、そちらのケアもして欲しいと言う。

この三点セットを頼んでから本人は帰国するのであるが、こちらに見返りは無い。ゼロである。

年末にもなると、わたしは便利屋のように、リタイヤメントオヤジからそういった依頼を受け、ホイホイと受けていた時期がある。
中には、片道ナン時間というような距離のオヤジの頼み事さえ受けていたくらいだ。

 

そして、年始になるとはじまるのが、わたしの悪口大会である。why..

リタイヤメントオヤジというのはヒマなので、横のつながり(だいたいゴルフ)があって結束も強い。そして同年代でもある。
だから、世話を焼いている筈のわたしの悪口を言って、酒の席で盛り上がっていたのであった。

わたしにしてみると、感謝こそされ、なんでそんなことになっているのか分からない。

わたしは散々世話を焼いてきたのである。

「インターネッツの料金を払いたくない!」と言われれば、隣の家にいってWIFIパスワードを教えてもらい、
「女房が病気になった!」といえばお見舞いを出し、
「ノートパソコンが動かなくなった!」と言えば手配をし、
「スマホのネットがつながらない!」と言われたら、サリサリにいってロードまでしていたのである。
それも、一回一回、往復ナン時間であったのだ。

で、なんで俺がそんなに悪者になっているのかというと、いわく態度が悪い。いわくナマイキだ。いわく年上の敬意が足りない。そういった話である。

わたしは、そういうことは自分に原因があると思ったので、リタイヤメントオヤジの皆さんの気分を害さないように、さらに平身低頭し、勉強させていただきますという態度を取っていたのである。

ところが、そういう態度を取っていると、彼らはどうなったかというと。増長したのである。

ますます私へのリクエストは多くなり、もはや交通費さえも貰えないという時期さえあった。海外パシリである。

でも俺にだって生活がある。
いくら海外とはいえ、さすがに自費で、休みを使って、オッサンたちの面倒を見るというのも限界になりつつあったのである。

 

あるiphoneのメンテナンス

そんな折、リタイヤメントオヤジのひとりが、iphoneの調子が悪いから直せ!と、有難い命令をしてきた。
わたしは「それは大変でしたね!」と、修理を引き受けたのであるが、その過程で、

比人とのヤバすぎる「うっふーん」な写真が出てきたのである。「うーん。これがバレたら終わるな」というシロモノであった。

その写真は『電卓に偽装して隠せる写真』だったのであるが、わたしは修理に際してiphoneをマルマルバックアップしていたので、ンなもん偽装にもならず、普通にズラズラっと写真として出てきたのである。

なお、そのリタイヤメントオヤジは、比で重要な仕事があるからといって、日本の奥さんの稼ぎを全額比に送らせていた人であった。

おやおや。とんでもない写真が出てきてしまったなぁ、と思いつつ、わたしは何もしなかった。
(メンテナンス中に出てきた他人のプライバシーを、本人に突きつけるというのは私の倫理としてあり得ない)ただし弱みは握ってしまった。それも極上のブツを。

 

写真を隠す電卓アプリから、続々とうっふーん写真が出てくる

当時、iphoneのセキュリティなどガバガバであった。嘘だろと思うだろうが本当である。
(なにしろ多少の専門知識さえあれば、メルアドとパスワードでicloudにログインできた時代である。どれだけの破壊力か想像できるだろう)

そして、笑えるのが、リタイヤメントオヤジは仲が良いので、みんな、その「電卓に偽装して写真を隠せる有能アプリ」をインストールし、フィリピン人女性とのうっふーん写真を撮影しまくっていたのである。

そうなると、遅かれ早かれ、わたしの手元には、そういった写真やデータが溜まっていくことになってしまうという状況になったのである(笑)

リタイヤメントオヤジは、全員、愛する奥様が日本にいるという状況である。

この辺りから、わたしは急速に「もしかして、リタイヤメントオヤジって、ただの老害なんじゃね?」という思いを強く持つようになった。

クチでは偉そうなことをいっていながら、このデータは何なんだよと。(写真以外でもいろいろ出てきたのである)
中には、ほとんど犯罪なんじゃねぇのコレ?というようなやり取りさえ目にするようになった。

「日本で成功した紳士が、日比を往復して悠々自適のリタイヤメントをしているという像」は完全に崩壊し、ただの見栄っ張り。メンドクサイ人々がほとんど全員であることに気づいたのである。

 

帰国するとFBに公表しているバカ

リタオヤは泥棒に入られることが多かった。それを全部俺のせいにされた。二回言うけど辛かった。

鍵を預かっている俺はペコペコ謝ったのであるが、あとでFBを見てみたら帰国しますと書いてあるのである。バカである。

常識的に、比にいる単身者は、帰国する日を公表することはしない。自分が留守だと全世界に公表したら、泥棒に入られても仕方ないからだ。(FBを使って留守宅を狙い、泥棒するのは全世界の常套手段である)

おそらくメイド、ドライバー関係から漏れて、実行犯はFBを見て納得して侵入したという絵図が想像できる。そんなん盗まれる方が悪いのだ。

 

フィリピンは銃があるし、正当防衛の幅は広い。無断で家の敷地内に入ったヤツは、殺されても文句が言えないのが当然だ。
だから泥棒も慎重になる。泥棒だって死にたくない。
そんな中で、確実にルスの家というのは外人が帰国したときだ。だから帰国情報というのは喋らないほうがいいのである。

それをFBに投稿して、いまから出発しまーすなんつって空港の写真を掲載した結果。

メイドが手引きして、泥棒が実行して、オレが悪いということになるのである。これはもう何回もあった。

 

世話焼きを止めた

そして、ある時。俺はリタイヤメントオヤジから苛烈な説教を受け、およそ日本人同士としてあり得ないほどの処遇を受けた。オヤジたちからの集団リンチとも言えることをやられた。
この袋叩きにあった際、俺は彼ら全員の世話焼きを一切やめると宣言した。

彼らは、このナマイキな若いヤツ(俺)に勝ったのだ!おめでとう!なのである。
俺は負けた。でも俺は開放された。釈放されたのだ。

彼らの説教は、一回の訪問で四時間以上にもなっていたし、いくら俺でも無料奉仕はもう限界だった。
年長者への尊敬は今でもあるが、彼らの若い時の武勇伝は、ひとりあたり同じ話を20回は繰り返し聞いていたし、もう学ぶべきものもなかった。お互い潮時だったのだ。

彼らは当初勝ち誇っていたが、俺を詰めたことで、自分の生活が不自由になることに気づいた。
なかには、全収入を断たれた人さえいた。死活問題である。しかし、わたしは「迷惑をかけた」のだから、去るのが礼儀だろう。

後日談

わたしが世話を焼いていたリタイヤメントオヤジは、なんと全員、一年以内に帰国したことを知ったのである。

なんのことはない。私がいなくなって、職も生活も全て保証が無くなった結果、生きることさえできなくなったわけだ。使えないだの気がきかないだの文句を言っていたワリに、リタオヤは比で自力で稼ぐ力は無かったと見える。

彼らは、ふたつある家庭の「日本のオンナ」に戻ったわけだ。こちらの家庭は、わたしが知る限り全部ほったらかしである。

 

—さて。どうしようか。

月日はたったけど、私は「あの写真」を、まだ全員分もっている。

わたしを利用し、散々いじめ、タダで人を使い、好き放題にからかった奴らは、今、何事もないように日本に住んでいるわけだ。

彼らにとって、日本の家庭は生きる術そのものなんだろうからね。

俺が壊すことはないけども、俺は壊すことが出来る。

その権利を持っているというだけで、それは俺にとって、ささやかな復讐になっている。

旅行