全身偽物ブランドのフィリピン人は、何故税関で捕まらないのか?

フィリピンは偽物大国だ。街中に偽物が溢れている。あまりにも偽物が有りすぎて、それがデファクトスタンダードになってしまっているのがフィリピンだ。

ルイヴィトンのベッドカバー。シャネルの足ふきマット。ナイキのサンダル!この三点セットはどの家庭にもあるほど普及している。
「フィリピンで暮らしていると、偽ブランドを買わないほうが大変になってくる」これは大げさではない。

そんなフィリピン人が、今日も毎日何千人、ゾロゾロ私たちの国に入国している。
それってつまり、大量の偽ブランドを日本に持ち込むということになっている。今日は、あれはどうして捕まらないの?という話。

自分で身に着けているものは合法

実は、フィリピン産のC級ニセモノに限らず、自分で身に着けて入国するのは全て合法である。商標権OKなのだ。なにも咎められることは無い。
フィリピンに住んでいると、ほとんど無意識に、ウッカリ偽ブランドを持ち込んでしまうことがある。誰もが身に覚えがあるだろう。
帰国時、おかしな偽物を持ち込まないように気遣いしている人もいるかもしれない。

でもそんな心配は要らない。なにも問題ないので堂々と持ち込んでよいのだ。意外に思うかもしれないが、法律上商標の侵害にならないからだ。

この記事を書いた時点で、日本の法律では、

自分で身に着けている私物⇒〇
自分で身に着けて入国し、偽ブランド業者に渡した⇒×
商売目的に持ち込んだ⇒×

こうなっている。(二番目は最近新しくできた法律)

本当は日本も取り締まりたいのだろうけど、これを取り締まってしまうと、フィリピンに限らず後進国や発展途上国の人々の出入国が事実上止まってしまう。

「善良な比人が上陸許可を得て、日本大使館の正規書類を持って本邦に到着した」としよう。偽ナイキを日本に持ち込んだ犯罪人として処罰できるだろうか?
答えは『自分で身に着けている私物はOK!』なのだから良いのである。

 

じゃあどのくらいならアウトなの?

自分で使うものならOK!という不思議な法律が商標権なんだけど、じゃあどこまでOKなのかというと、常識的な量と考えていい。
時計ならせいぜい二つ。欲張って3つは通るのか・・?アクセサリーやTシャツなら滞在日数程度だろう。自分で使うものと認められないものは、よくて没収。
・・・滞在日数分の衣類ならOK? フーン・・じゃあ日本人なら無制限じゃん!とはならない。大量に持ち込んだから販売目的と認定されて終わりだ。
未開封新品なら、せいぜい10枚くらいだろうか。

バレたらどうなるの?

フィリピンで偽ブランド品をゴッソリ買って、知り合いに売ったら儲かるんちゃう?クチコミで広まったら・・・ウッハwww夢が広がりまくりンゴwww
・・・というDream’nは多い。というより絶えないと言ったほうが正確だろうか。グリーンヒルズという強力な仕入先を知ってしまったら、旅費を浮かそうと思う人も出てくるだろう。

みんな最初は初めての海外なのは分かるけど、それが出来たら誰も苦労しない。それが出来ないのは先人の勇気が蛮勇であったことを、在住者は経験として知っている。
止めておけ、と一言いうけど、あとは自己責任だ。運がよければ、思惑通り儲かるだろう。

 

わたしの客は、シャネルの時計を20数点ほど緑ヶ丘(グリーンヒルズ)で購入して帰国したら、まんまとバレた。まあ、当然である。自分で使うという量じゃない。どうなったか?

いわゆる別室送りである。税関の脇にある部屋だ。
お土産だと言い張ったようだが・・・・その言い訳は通った。ギリギリお土産という量だったのが幸いしたのか。

「偽ブランド密輸事件」という紙を持たされて、税関で顔写真を撮影され、時計は没収されて引受人付で釈放。
今度『海外から偽ブランドを持ち込んだら・・・わかってんだろうな?』ブラックリスト入である。今度やったら逮捕だけど、警察も呼ばれず、一応オトガメナシの形となった。
(これは日本人だからだろう。外人なら入国させてもらえず、上陸禁止5年打たれるんだろう)

日本の税関甘くないとして、一応「イエローカード」はあるようだ。相当数の日本人が『税関チャレンジ』をシャレこむのだろう。
だからイエローカードで脅迫して、次は逮捕な?ということなんだろう。そうしないと多すぎて実務上回らないと想像する

軽い気持ちで時計10コ20コと持ち込んじゃうというのは、おそらく毎日あるんじゃないか。魅力的な副業と考える人は相当数いるだろう。
しかし、これがバレて別室送りになり、犯罪者扱いされ、テーブルには時計が並べられている。言い逃れ不可能の状態で、身元保証人がイナカからスッ飛んできたら・・・

次回は手錠—こんな強烈体験をして、二回持ち込んだら本当にバカである。

ニセモノ関係で報道される人ってのは、二回目の人なんである。

 

偽宝石はスルー

あまり知られていないが、フィリピンは偽ブランドだけではなく、偽宝石というのも売っている。これはいくら日本に持ち込んでも問題ない。
ただのアクセサリーとして取り扱われるからだ。(もちろん限度はあるだろうが・・・)ホンモノと偽って売ったりすればダメだけど、持ち込みは全く問題ない。

例えばダイヤに近いキュービックジルコニアは日本どころか世界中に蔓延しているけど、ごく普通に流通している。日本にも大量にあるけど、これは何をどうしようが問題ない。
鑑定書なんか作ったりして人を騙せば罪になるけど、ただのアクセサリーとして売買できる。

(略)私の中では『隠れたベストセラーパサルボン』である。
個人間の、ささやかな秘密の共有を楽しめる一品だ。

 

お笑いフィリピン産コピーブランド

じゃあ、もしもあなたが、「よぉぉ~し!パパ、フィリピンで偽物仕入れて、日本で大儲けしちゃうぞ~♪」と思っているのなら止めた方がいい。
それは逮捕されるかも知れないとか、危ない橋を渡って特定され訴えられるとか、日本人なら日本の法律を守らなきゃいけないとか、そういうことじゃない。それ以前の問題だ。

フィリピンで売っている偽物は、あまりに品質が悪い。誠実に偽ブランドを売れないのだ。リピーターはまず見込めない。新規開拓を延々とするハメになる。
投資した時間に対して得るものが少ない。業者として真面目に偽物を売ろうとしてもできない。フィリピンの偽物は全く進化していないので、今後も同じクオリティだろう。

日本の法律では『業としてコピーブランドを販売した者はァ!!』と言うが、日本さん・・・そんなに意気込んで貰わなくていい。業として商売などできやしない。

業にならない。他の国を取り締まったほうがいい。フィリピンの偽物販売をするなんて、墓穴を掘るくらいの例えでは済まない。無謀以下。ただのバカ。不可能だ。

グリーンヒルズやディヴィゾリア、バクラランで偽物を買って日本で売るという商売は成り立たない。かつてやろうとして失敗例は聞くけど成功例は聞かない。なぜか。

分かりやすく時計で言おう。フィリピン産のオメガやブルガリ、シャネルの時計は毎日ちゃんと遅れる。遅れるくらいならまだいい。
時間なんてスマホで見ればいい。ニセ腕時計で時間を確認するほうが悪い。それよりオメガの時計を見せびらかすほうが大切だ。

それより小さな問題がある。フィリピン産の偽時計は、秒針がすぐ取れる。ヘタすると買った当日取れる。運がよくても翌日取れる。
3000ペソという大枚を切った高級オメガの秒針は、空しく外れて静かにガラスの中で横たわっている。あなたのマヌケっぷりをあざ笑うように、静かに外れている。
薄暗いキャバクラでモテようと、一瞬でも思った夢は散ったのだ。

ホンモノのオメガは、おそらく百年単位で秒針は外れないんだろうけど、マニラのオメガは一週間持たない。だってフェイス(盤面)に乗せてあるだけなんだから。
フィリピン産のブランド時計は、真贋判定簡単だ。振れば壊れるのだ。

笑い話だけど、観光で買った人らは激怒する。史上最強の消費者である日本人は、騙されたことを絶対認めない。

滞在中に秒針が取れていることが分かれば、当然「怒りの交換」にいくだろう。自分の語学力で、海千山千の偽物屋と交渉できるだろうか?不安は募るが、海外で騙されたマヌケになりたくないので、もう一度グリーンヒルズに突っ込んでいく—わけなんだけど、そこはあまり心配要らない。見せた瞬間、アッサリ交換してくれる。

二回言うけど、業者は秒針が取れるクレームに慣れきっているのでアッサリ交換してもらえるのだ。まさかのクーリングオフOKだ!ただしどうせまた取れるけど。
また外れたらまた交換してあげる!とまで言われる。凄く不思議な気分になるだろう。この感情を、どう表現したらいいのだろう?

偽時計の秒針がすぐ取れるというのは、売り手は皆知ってる。常識以前だ。外れないほうがおかしい。むしろ外れない時計ってなんなの?くらいの勢いだ。
あなたが海外で偽時計を買い、アレコレ想像した翌日に針がポロポロ取れたら怒るだろうけども、そこは怒るポイントじゃない。ちゃんと保証はあるから心配いらない。

モール内には、再接着する業者がいる。取り付けて再販するだけなのだ。
あなたがメチャクチャ意気込んで「別の同じ時計と交換しろ!明日帰国すっから待ってられない!」と言えば、在庫さえあればアッサリ交換してくれるだろう。

だって、あなたの針の取れるロレックスは、また別のアメリカ人やオーストラリア人に売ればいいだけなのだ。
不良品はグルグル回っていて、クレームはいつか止む。フィリピンの不良品というのは偽時計に限らず、どんな電化製品でもグルグルと回っている。

あなたが受け取って納得したら売買成立なのだ。だからCASHを払ったんでしょ?ということになる。
何人もクレームを入れた時計を「オッいいな!」と現金で買って失敗したなら、あなたの目利きが悪いだけだ。どこに訴えるのか?
マニラ在住の同行者に、この不満をぶつけるのは筋違いだし、案内したお前が悪いみたいなこと言われたら、コッチもちょっと怒るかんね。
グリーンヒルズはメルカリの値引交渉や、ヤフオクの直接取引みたいなチョイワルごときは全く通用しない。
この店舗は詐欺だ!と写真や動画を取りまくり、警察やSNSで拡散しても、ダメージゼロだろう。ゼロどころかマイナスだろう。グリーンヒルズの存在が許されているのは何故なのか?という二手先も読んでいない観光外人(日本人)がどうして太刀打ちできるのか。

あなたは、元々秒針が取れやすい時計を買ったのだ。返品を掴まされたのだ。ここに気づかなければならない。騙されたんじゃない。騙されたんじゃないんだよ!あんたがマヌケな観光客丸出しで、ただカモにされただけだ。勉強料でもない。ただ空しく散財しただけだ。

落ちてる現金拾わないヤツいないだろう?という理屈が、おそらくグリーンヒルズの理屈として正しいだろう。

グリーンヒルズの販売員は、朝から晩まで生活を賭けて、外人相手に上手を言って時計を売っている海千山千のソルジャーであることを忘れてはならない。
バンコクのカオサンロードより強いといえば分かるだろうか。あなたが言うであろうセリフは、観光客に何万回も浴びせられたセリフだ。対応も決まり切っているものだ。グリーンヒルズの偽物業者とコネクションを持っているという人がいるけど、よく聞けばただのお得意様になっている人も多い。

(ニセモノ業者は、買ったあなたの顔をよく覚えているので、秒針については永久保証してくれる。取れる度に交換はしてくれる。つまりマニラに来る度にあなたはチップを払うことになるので、業者に取っては収入になるのだ。そしてまた外れる。そうしていつか、俺バカ?と気づくのだ)

ナニワ金融道で「—オメガの本物は、24時を指した瞬間に、バチっと日付が変わるんや!」という真贋の見分け方解説があったけど、メイドインフィリピンのオメガはそういう話じゃない。
22時で日付が変わった程度なら相当正確だろう。3時に日付が半分変わっているなら大当たりの部類だろう。C級品になにを期待するんだろうか?
フィリピンオメガは時間を見るものではないという常識がまず先にある。それがイヤなら本物のオメガを買うことだ。

それにしてもフィリピン産シャネルは特に酷い。ド素人が見た瞬間でも偽物と分かる出来だ。あの『漂うプラスチック感』はタダごとではない。ホンモノに寄せる努力が一切ない。マニラの、提灯が逆さまになってるタコ焼き屋みたいなモンだ。これはもうシャネルの偽物じゃない。偽物職人が怒るだろ、というシロモノだ。
フィリピンの偽物市場は、海外見聞として楽しめるけど、シャネルだけは持ち帰らない方がいい。日本で恥をかくからだ。

じゃあデジタルならええんやろ?とGショックを買うと、電池は必ず液漏れする。腕に着けているんだから健康に直結する。

 

少しは真贋が分かると、マニラのニセモノはグッと面白くなる

たとえばルイヴィトンの本物は、LVのロゴが途中で切れる裁断は絶対行わないんだけど、A級モノは切れているものがある。こういった真贋を養う目というのは、やはり本物を見慣れていることだ。『上から下までブランドモノ』という、マニラでは歩く身代金みたいなゴールド聖闘士がいるけど、ニセモノだったら面白い。その真贋が分かるだけでも、海外ビジネスをやっていく上ではちょっとした人物鑑定となる。グリーンベルトやオカダマニラで、たまに本物を見にいき、新作を眺めるだけでも情報は得られるものだ。

グリーンヒルズのことを書いたけど、正直マニラに観光に来て、ちょっと冒険で偽物を買うくらいのことは、海外経験として楽しいだろうし、少量であればオオゴトにはならない。
商売人との駆け引きなんかは、是非同行者ではなく自分でやってほしい。
騙されたヤツが悪いというフィリピンで、さてあなたのスキルはどのくらいだろうか?日本では味わえない、ニセモノ業者との漫才を、見事演じきれるのか?
グリーンヒルズはマニラならではの観光スポットである。腹が減ったら山頭火でラーメンを食いながら、戦利品の話に花を咲かせることもできる。
騙されずにお宝を買える人は少ないが、これも含めてマニラ体験と言えるだろう。前述したが、身に着けている私物程度なら持ち込んで構わない。海外のちょっとした冒険話にはうってつけだ。ここが面白いところだ。お土産は時計じゃなくて経験のほうなのだ。

 

偽物の級とはなにか?

ところでよく偽物でSだのAだの言うんだけど、そもそもこれについて知らない人が多い。

Sというのは本物のことである。
S級偽物というのは、ホンモノの工場で作られたものを横流しして流通しているものなので、縫製からなにから全く同じ。鑑定しても分からない。書類上偽というだけだ。
ただし、S級といってもA級、B級を、そう名乗っているモノが多いので注意。これはあなたの真贋の目がないと見抜けない。
ちなみにSS級と言うのは、購入したレシートが付いていて、ネットで真贋判定しても本物という結果が出るものである。買取もしてもらえる。限りなく本物なので、SS級は値付けも高い。
この品は、流通経路が正規ではないのだ。

A級というのは、鑑定したらバレるというものだ。ホンモノにかなり寄せているが、正規工場で作られていないものは全部A級である。
ホンモノと並べて、初めて偽と分かる位の品質がA級だ。A級偽物は、日本の質屋は全部見抜くと思ったらいい。どんなにクソショボイ質屋でも、A級が見抜けなかったら廃業である。
日本の質屋が買い取るのは、最低S級以上。A級品はプロは全部見抜くと思っていい。

B級は、ホンモノと同じように見えるものである。かなり雑なので、素人でもそのブランドに詳しいひとなら見抜ける。ニセモノ感がある。
C級は、ただロゴが一緒というだけで、新作もクソもない量産品である。誰でも見抜ける。シャネルのゴミ箱、ヴィトンのトライシクル幌が本物と思う人はいないだろう。ジョークグッズに近い。フィリピンの偽物はC級。グリーンヒルズでガラスケースに貼っているのはB級に届かない程度である。

 

値切交渉の目安とは?

値切交渉はまず長期戦であることだ。最低一時間以上交渉しないと値切れないと思ったらいい。毎日通う位でないと、基本的に値切れない。
そんな暇がない人の場合、まず言われた金額。例えば一万ペソと言われたら1/10の価格(この場合1000ペソ)から交渉していくことだ。相手はプロである。毎日日本人と相手をしている商売人が、30分程度の交渉でベストフレンド価格になるわけない。見分け方として、買った商品に袋が付いていたら失敗である。ガチで値切ったら、梱包をしてくれる店員はいない。たかがビニール袋一枚も包んで貰えなくなる。追い返されることも多い。
値切り交渉に失敗した段階で、追いかけてくる店員も多いが、これは一種の儀式である。

「一万円」「千円にしろ」「無理」「あっそ。他いくわ」このやり取りはテンプレであり、儀式である。客が来たら座布団を出す程度の会話だ。でもこの儀式をしないと話が進まない。
じゃあ分かった、千円に俺の投げキスを付ける!これ2万円だからお前ら払えよ?くらいバカなことを言って、ようやく土俵に上がったと思っていい。

ガツガツと金額交渉する日本人は非常に多いけど、値切り交渉のやり方も知らない人は多い。マニラの自称旅行ガイドなら失格だ。
Gショックの小売価格は250~300ペソなんだけど、それを「1000ペソに値切った」と言われても、私は苦笑いして凄いですね!と言うしかない。

出物もある!

なんだか夢も希望もないこと書いてしまったけど、フィリピンでもニセモノの出物はある。ヴィトンやオメガ。ロレックスやフランクミュラーなんかは千三(せんみっつ)もないけども、ゴクマレに珠海から流れてきたよーなS級を見ることがある。私は二回遭遇した。一点はブレゲ。一点はジャガー・ルクルトであった。特にジャガー・ルクルト・ジオフィジックを見た時は声が出た。『腕時計投資』をする人なら分かると思うけど、コレ定価は100万くらいなんだが100万ではまず買えない。憧れのトゥールビヨン。ヤフオクで出したら、一本でも即ナン十万の値段が付くニセモノだ。こういう精密時計というのは、まずニセモノ自体の存在が少ない。それが2.4万ペソで売られていた。これはもうタダみたいなモンである。

なおブレゲは買って日本に持ち込んだんだけど、目ざとい私の友人に即没収された。
翌日返せと言ったら、キャバ嬢にモテたい一心でプレゼントしちゃった!と言われたんだけど、それは嘘だった。本人が気に入っていたのだ。

ソイツは秒針の取れないブレゲを、今でもさり気なく自慢しているんだけど、俺だけはその秘密を知っている。