また税関と喧嘩してしまった話

(※この記事は他媒体で掲載されたものを加筆訂正しました)

私は、日本の税関とは戦いを繰り返してきた。過去ブログにも書いているが、読み返してみると酷いものだ。自分が恥ずかしい。
これまで私は、いつも入国時のイエローカード(申告書)ほぼ白紙で提出していたのは、熱心な読者の方は皆ご存じと思う。

住所:ホテル(※ホテル名ではない。HOTELとだけ書いている)
連絡先:ナシ
いつも、これしか書かない。これは本当である。「これで通れるんですか?」と散々言われてきたけど、あなたが日本国籍を持っていれば通れる。これで何十回も通っている生きた見本が私である。

ただし当然、税関はいい顔しない。当たり前だ。不審人物そのものだからだ。毎回毎回カバンをひっくり返され、同行者には呆れられ、時間を無駄にしてきた。

「日本の滞在先はどちらですか?」と聞かれても、『なんでそんなことを答えなきゃいけないんですか?』と一蹴してきた。日本人が、日本のどこに滞在しようが、あんたらに申告する必要はないと突っぱねて来た。私は日本国内でどこをどう移動しようが、なにも官憲に届け出る必要など無いからだ。これは言いがかりではない。

「アー成田市内のホテルです。でも突然気が変わってレンタカーで九州まで往復しちゃうかも知れません♡」等と、若い頃は煽りに煽っていた。
素直に申告すれば、無用な時間を使うこともないのだが、私は居場所を申告する必要自体が無いと思っているので、当然モメる。つまり、ただの面倒くさい人である。

だって私が本当に気が変わって、申告したホテルには行かず、レンタカーで成田から九州に行ったからといっても、それは何ら問題ないことだ。
友人から「カレオツー!帰国したの?呑もうぜー」と言われてホテルに泊まらず友人宅で朝まで痛飲したら犯罪か?そうではないはずだ。帰国したら誘いも多い。税関に構ってられない。

外人なら申告通りにするべきだろうけど、私にとっては関係ないことだ。なんの許可も申告も要らない。だったら申告する意味無いじゃん。意味がない。

不審と思えば、警察や軍を動員し、逮捕拘禁すれば良い。理由を明らかにし、裁判所の令状の元で取り締まるのは合法だ。海外から来たとなれば、予備的に拘束することもあるだろう。そんなことは分かっている。治安は何より優先すべきことだ。でも私はテロリストじゃないことを自分自身でよく知っているので、堂々と入国していいと思っている。国内で職質に合えば応じればよいだけだ、と思っていた。

 

とはいえ、今回はいわゆるコロナ下だし、実のことを言うと、税関と戦うことに関して、私はもう疲れたのである(すいません)

わたしの税関話は、もはや連載記事というべきボリュームになっている。どうして帰国する度に、毎回ドラマが起こるのだろう?これは本意じゃないのだ。

「ブログ読みました!ロックな生き方賛成です!」なんてコメント沢山貰ったけど、別に私はロックな生き方を選択しているわけじゃない。
わたしは反権力じゃないし、どちらかというと保守である。

単純に、日本国民は日本で自由に行動できるハズであり、どこに行こうが役所に申告する必要など無いという考えを、コロナ以前より持っていて、それを実践してきただけだ。

沖縄の人が突然北海道旅行をしたとしても、日本国籍ならば、居場所を役所に届け出る必要はない。だったらそれと同じ扱いにならなければおかしい。
空港の出口だろうが高速の出口だろうが、国内移動で、どこに行くか役人に問いただされるイワレはない。役人の誰何そもそも相手にする必要などない。というのが私の考えだ。異論もあると思う。でも、私は日本国内で移動するとき、どの役所にも申告なんてしたくないし、する必要もないと思っているので、これまでしてこなかった。ひとりで小さな抵抗をしていたわけである。

 

 

実は今回。これまでの不毛な戦いを止め、カードは素直に記入した。税関カードを素直に書いたのは20年ぶりくらいである。

今回は特に日程が詰まっていたし、コロナでもあるし、気持ちよく入国して、明日に備えて英気を養いたかったのだ。なにしろ全泊前予約で、半月以上日本に居る計画だったのだ。日程が一日ズレるだけで何十万円という被害となる。お金も大事なのである。税関記事も、もう書き尽くしたし、オシマイにしたかったのだ。

 

わたしはちゃーんと記入したイエローカードを渡したのである。エッヘンなのである。

—職員も同じ日本人。不逞外人から日本を守る防波堤なのである。職務に忠実大いに結構!

フッ・・・・長いモノには巻かれろという。俺も歳をとったな・・・等と、パスポートを取り出しながら、俺は一瞬満足していたのであった。

「すいません。アンタ何しに来たんですか?
・・・ハ?
いきなりスゴイ言葉を浴びせられた。

前にも書いたけどさ。日本人が帰国した際に、お疲れ様でした、大変でしたね、の一言くらい言ったらどうなんだ?

さっきまで愁傷に浸っていた俺は、この一言で一気にボルテージが上がってしまった。何しに来たってナニ?俺は当然喧嘩腰になる。なってしまう。

顔を上げたら若造であった。いかにも20代、拝命したて、といった風だ。
それより、俺の出国先の自動ドアの前に、40代職員が立っていることのほうが気になった。これは今までと違うパターンだ。

—なにしに来てもいいでしょう

俺は努めて冷静に答えたつもりだったが、言葉に怒気は入ってしまった。彼にとっては予想外の返答だったようだ。いかにもうろたえていた(こんな返答されたことないんだろう)

「フィリピンにはなんで行かれていたんですか?」観光です。「仕事ですか?」仕事です。「観光なんですよね?」観光です。「仕事ですか?」仕事です。「観光ですか?」観光です。
「なんの仕事ですか?」まるで禅問答である。私ははじめからまともに答えてない。

実際、この質問は何なんだろう。何を言ってもマニュアル通りに質問が来るのは全国の空港で共通しているから、私は質問に全部YESと答えているだけだ。素直に応じている体である。
仕事で行って観光することもあるだろうし、観光で行ったら仕事になることもあるだろう?

そもそもこの質問って税関と関係ないはずだ。こういう質問をするのはパスポートコントロールの役目ではないのか。
同じ質問でも、私はコントロールで質問されたら全て正確に事実を話すつもりだけど、そうはならない。そしてなぜか税関が不躾な質問を浴びせてくる。
私の態度が相当税関職員に取っては気に入らないのは分かるけど、こっちも理由があってやっているのだ。わたしは外国人ではない。

 

—-「なにしに日本に来たんですか?」二回言いやがった。「荷物拝見させてもらっていいですか?」—どうぞ。

彼は私の荷物(小さいゴロゴロ)を全部分解する勢いで検査しだしたので、
あー。別室にX線あるでしょ?わたしいつもやられているんで、持って行ってもらえます?と言ったら大丈夫です、といって閉めた。
いいのかよ。検査しろよ!今回はヘタレである。本当にイライラする。忠実に職務を執行する職員のほうを、私は尊敬する。私が大きい声を上げて、ひるんで別室X線をしなかったのである。
もっとも、私の手荷物は着替え以外入っておらず、見るからにスカスカだったのであるが。

 

「えーと、それでなにしに来たんですか?」
三回言いやがった。ついに俺の中でなにかが弾けた。(本当のことを言うと免許の更新に一時帰国したのであるが)

 

「・・・何しに来たか教えてやってもいいよ。でもお前にだけは話さない。話してやるから上官呼べよ。名刺出せ(出せません)持ってんだろ(持ってません)持ってないハズないんだけどな?持ってないの。フーン・・・フーン持ってないの。持ってないってことないと思うよ?分かりました。持ってないのね!後から持ってましたとか言うなよ!じゃあアナタ、官名職名が分からないから(以下長文略)」私はネチネチと、若い入管職員を突いた。本当に性格の悪い老害そのものといった風に、私は対応してみせた。これは「何しに来た」のお返しである。

 

すると無言で俺のパスポートを渡してきた。

ハ?なにそれ。他の空港だともっとモメたんだけど。ここからいつも盛り上がるんだろ?

喧嘩を売ったら白旗を上げてくる職員も初めてだった。ここからカネがカーンと鳴って、訳の分からない言いがかりをつけられてメチャクチャになるのがこれまでのパターンなのに、今回は喧嘩を売ってきた職員がオシマイにして通してくれたのだ。有難いかも知れないが、じゃあ初めからそうしろと言いたい。何しに来たのか知りたくないんだろうか。答えていないんだけど。

俺は自動ドアを塞いでいる上官らしき男に絡んだ。

そして、かなりデカイ声(税関中に聞こえる、警戒中の警察官も皆聞こえるくらいの大声で)
『気分悪いよ。何しに来た?自国民に対してそりゃあ無いだろ。外人じゃないんだよ。そうそう。アンタ、何しに日本にいんの?』と言った。

無言。
『ねぇ、アンタなにしに日本にいんの?今日泊まる場所どこなんだよ!』
無言。

俺は自国の公務員に、イヤミを浴びせるために帰国したんじゃない。国に戻っただけだ。なにしに来た、は無いだろう。
これまで何十回も戻って税関とトラブルになったけど、こんなことを言う職員はひとりもいなかった。

外国人にはどんなにシビアな質問をしてもいいだろうし、外人は誠実に答えなければならないだろうけど、俺は外人じゃない。あんたら税関に、卑屈に下げる頭を持ってない。

「何しに来たんですか?」と言われて何と返答すればいいの?余計なお世話だよ。

トラブルを避けよう。面倒を避けよう。自分の国の公務員と喧嘩する必要はない。味方同士で喧嘩してもつまらない。素直にしよう。
本当に心に何度も誓って帰国したのに、「何しに来た」の三連発は、わたしの自制心を超えるに充分だった。
いまでも全く納得していない。思い出す度に腹が立つ。偉そうに何様なんだ?

日本の空港税関は、海外で戦ってきて、ついに日本に戻った自国民を不愉快にさせるスキルを磨いているようだ。

俺たちは外国にいたかもしれないけど、日本の水を飲んで育ち、国に故郷があり、戸籍もあってパスポートを見せているんだぜ?
何しに帰ってきたは無いだろう。戻ったのがまるで悪いことみたいじゃないか。どうして、おかえりなさいの一言もないんだ?

 

結局またも開放され、私は空港から市街に向かう電車に乗った。

懐かしく、美しい日本の風景が車窓から流れてくる。でも果たして、ああ帰国したなと感動を味わえなかった。
「あのガキ!何しに来ただと?!」俺はチンピラなんだろうか?こんな小さなことで、怒りを抑えきれない。

在留邦人は何百万という人数がいるはずだ。本来強い力を持っているはずなのに、どうして、ああいう税関の態度に対して誰も何も言わないんだろう。わたしのような記事を読んだことが無い。邦人誰もが、税関の不遜な態度に声を上げていない。

日本人の場合結局入国できるので、一時ガマンすればいいという考え方が主流なようだけど、税関職員は言葉に気を付けてもらいたい。
少なくとも、帰国邦人に対して「何しに来た」というのは止めてほしいっていうか止めろ。あんたたちに関係ない。

在留邦人が国に何しに戻ったか?例えば海外に五年もいたら、理屈抜きに帰国したいと、誰もが思うものだけどな。そんなことをいちいち説明しなきゃいけないのか?
自分の国に帰ってきた人たちは外国人じゃないんだぜ?居場所や連絡先なんてどうでもいい。聞いてどうすんだ?それは治安の役割だ。

 

 

 

 

 

 

 

(※この記事は他媒体で掲載されたものを加筆訂正しました)