三億ペソを抱いて寝る男(5)

翌日。

わたしはまた、玉城の家にお邪魔した。続きが気になるからだ。カジノの件は多分嘘。でもカネはホンモノ。

だとしたら、なにかネタばらしがあるはずだということで、ホイホイ出かけたのである。誰か応援を呼ぼうかなと思ったんだけども、あいにく誰もいなかったので、ひとりで行った。

玉城は、すぐに会ってくれた。

「どーもどーも、朝ごはん食べました~?」なんて言って笑顔で迎えてくれた。

雑談はどうでもいいから、すぐに本題に入りたいんだが、玉城は、まずコーヒーが先だと言ってお湯を沸かしている。

(…今日はインスタントなのかよ!!)と心の中で突っ込みを入れつつ、すぐに質問に入ることにする。

 

で、タマちゃん…昨日の続きなんですが…昨晩、いろいろ考えて、かなり質問があるんですけど…

玉城は、待ってましたとばかりに「ああ、なんでも聞いて下さい」という。

じゃあまず。カジノのキズがあるという件。これはどう考えてもあり得ないことですよ。そのへんの情報商材じゃないんですから…

「それはね。ホントなの」

出目に偏りがあると?

「いや、違うの。サイコロはね、不審な点は無かったの」

え。昨日の話と違うじゃないですか!!

「まぁまぁまぁ…焦らず聞いて欲しい。順番順番」

はい

「まず。フィリピンのカジノのサイコロ賭博には偏りがあるんじゃないかと。サイコロに仕掛けがあるんじゃないかと。そう思って調べたのね。これは本当」

はい

「そうしたら、出目に偏りがあった。これも本当」

はい

「そんで分析もした。これも本当」

はい。ってことは偏りがあるってことじゃないですか

「いや、それが無かったんだよ」

???

「あのね。数字を取ってみて分かったんだけども、サイコロ賭博のね。出目が偏るというのはね。分析してみたら、これは特定の日付にだけ起こることが分かってきたのね」

ということは…?どういうことですか?

「んーとね。元々、サイコロに仕掛けがあるんじゃないかと思って調べた結果、サイコロに仕掛けがないことが分かったんだけども、出目の偏り自体はあると。そういうことになったのね」

(”サイコロに仕掛けがないのに、出目が日付で偏る?”)

「そう。それも特定の時間に、思いっきり偏るんだよ。200%とか、500%とかw」

えええええ!

「例えばね、その時間帯はね。もう6だったら6しか出ない。6のゾロ目が出続ける」

えええええ!

「そういう時間帯があるんだよ。そしてまた、元に戻る」

それってイカサマじゃないですか!

「そう、そう!」

玉城は嬉しそうに笑う。

「出目だけを記録しないで、動画で記録したのが生きたってことね」

ん?出目だけの記録で、時間帯のイカサマタイムは発見できるのでは?

「そうじゃないんだよ」

そうじゃないんですか

「そうじゃないんだよなぁ。出目の情報だけだと、ここから先が分析できないって思わない?」

….

….アッ、イカサマタイムの時に、賭けてたヤツってことですね!

「そうそうそう!その通り!!そうなんだよ。このイカサマタイムの時にだけ賭けているヤツ。ここに秘密があるのよ」

なるほど。このイカサマタイムの謎を解き明かせば…確かに必勝ですね

「そう!その通り!もう面白くなっちゃってさぁ」

え、イカサマタイムの時の動画とかあるんですか?

「あるある!もう穴が開くほど繰り返し見たよ!いつ始まるのか、何人賭けているのか、いくら賭けているのか、どんなヤツが賭けているのか、全部PCに入力して一覧表にしたよ」

で。どうだったんです?

「わかんねかったwwwww」

分かんなかったのかよ!!!

「もう皆で、何百回も見て議論したよ毎日毎日。傾向としては、だいたい夕方に行われる。これだけ分かった」

はい

「これだけでも立派な情報じゃん?夕方の特定の時間だけ賭ければ『当たりやすい時間帯』になるじゃん」

はい

「確変だよね。フィーバータイム」

はい

「じゃあ、もう夕方の特定の時間に厚く張ればいいんじゃないかと思ったんだけども、どうもこのイカサマタイムはね。日付がランダムなの。二週間に一回だったり、二か月に一回だったりすることもあるわけ」

あー

「そう。山をかけて張れないわけ」

賭けている人間のほうは?

「それもねぇ、ある程度絞ることは出来るんだけど、服装も違うしねぇ」

え、その為に、人を雇って!軍団員を貼りつかせていたのでは?

「無理無理ww」

無理なのかよ!!!

「だってさぁ。盗撮機材のバッテリーなんて三時間くらいで切れるし、カジノの営業時間は切れ間がないし…いつどこで実行されるかなんてわかんないのよ。それこそ100人くらい雇わないと」

あー…

え。じゃあ、これ攻略不可能じゃないですか

「そうなのよ」

せっかくイカサマタイムがあることがわかって、軍団まで作ったのに、肝心の仕込みの日次時間が、どうしても分からないと。

じゃ、ダメじゃないですか

「そうなのよ」

え。結局ダメじゃないですかマジで

「そうなのよ。いいところまで行ったんだけどねぇ…」

え。そんでどうなったんですか

「うまくいきました」

ええええええええええええええええええ!!!!!!

 

怒涛の(6)に続く