フィリピンのファイブシックスとは何か?

今日ファイブシックスの相談があったんだけど、そもそも「ファイブシックス」とは何なのか?知らない人もいるかと思うので書こうと思う。

ファイブとは元本。シックスというのは返済金のこと。そう。5-6とは高利貸しのことを指す。500ペソを借りたら600ペソにして返さなければならない。これがファイブシックスである。

日本でいうトイチは、10日で一割というルールだが、比のファイブシックス(5-6)は期限が曖昧である。貸し手と借り手の話し合いで決まるが、10日という短期ではなく、もっと長いことも多い。

ファイブシックスは需要がある

比では、銀行口座どころか出生証明書さえ無い人がゴロゴロいる。字すら読めないひとも知り合いに何人かいる。そういう人々というのは、まず、まともにお金を貸してくれるところがない。借りられるのは家族だけだ。それ以外から借りるとなると、ファイブシックスしかないということになる。

ファイブシックスをやっている貸し手は、チンピラかサリサリのことが多い。どちらも一長一短がある。

チンピラの場合は踏み倒せるかもしれないが、正直怖い。マフィアの末端だったりするので、返さなければ脅迫が現実になることがある。彼らは常にナイフを持ち歩いているし、場数を踏んでいる。

サリサリの場合は怖くないが踏み倒しにくい。また借りにくい。
地元のサリサリというのは、どこの家の誰々がOFWに行っているとか、そんな情報が常に入っているので、支払能力を吟味してから貸してくるし、一度踏み倒してしまうと地元に居づらくなる。それに怖いサリサリだっている。

踏み倒すとどうなるのか

5-6を踏み倒した場合、家に来て家財道具を没収されることが多い。ビレッジにセキュリティーがいれば止めることができるが、いない場合は持っていかれておしまいである。そして、結局お金は請求され続ける。

ファイブシックスは違法である

5-6はフィリピンで違法である。少なくとも法律上では明確に違法ということになっている。

インフォーマル・レンディング、等とキレイな言葉を使っているが、実はただのイリーガルである。

しかし、ほとんど逮捕されることはない。せいぜい罰金(50000P以下。初回はイチマンでバイ)である。見せしめ逮捕はあるが、大掛かりなものだったり、警察の仕事してます感の逮捕劇であったり、隠しきれずに捕まえたという程度のことだ。

何しろ、まずやっている数が多いので捕まえきれない。ファイブシックス業者は比全土で約5万件程度いるらしく、これは「町内に一件」程度ある話になる。そして、なにより比人自身が必要悪として認識している。比人の半分が5-6からカネを借りたことがあるとさえ言われている。

比には、アコムやプロミスのような、銀行と闇金の中間に位置する、「合法だけど金利高めだよ」という消費者金融のような存在が少ない。(※マニラ首都圏には一定数存在します。駅やモールで勧誘もしています。日本では一応の一応、形だけ程度ですが『アコム』が進出しています)免許一枚で貸してくれる業者もいるが、初回5000ペソまでとか、2000ペソまでとか、そんな信用枠しか貰えない。また保証人3人のようなマイクロクレジットもあるにはあるが、比の場合、タンバイ3人普通に飛んでオシマイパターンが多いので、この手の業者は死屍累々といったところである。

比では、お金を借りるという行為のハードルが高いのだ。商売として成り立たないので、踏み倒し分をマトモな人々から取るしかないのだ。

だから正規業者でもバカ高い金利を取られる上に、担保まで要求される。さらにアレコレと書類を要求される。この書類用件というのがメチャクチャ厳しくて、まずほとんど全員、マトモな銀行やノンバンクからカネを借りることができない。

だから、信用貸しの56は、金利はバカ高いものの、比人に絶対的需要がある。庶民の第二銀行といってもいいだろう。

 

おそるべきフィリピンの合法金利地獄

『そんなマフィアだのナンダノと関わり合いになりたくない』善良な一般人も多い。フィリピンだって、社会を支えている中間よりちょっと下くらいの層(一年以上(←重要)正社員として雇用されている人々)はもちろんいる。何百万人という「チョイ悪程度はやるけど、基本マトモな比人」も相当多い。誰もが六か月でクビ切られるわけではないのだ。採用されて階段上るヤツだって一定数はいる。

日本もそうだけど、こういう人たちがいないと国は成り立たない。

じゃあ。

ある程度努力して、なんとか学歴やキャリアを形成し、社会に認知してもらい、クレカこそまだ早いが、バッチリ銀行口座も持っている。一応真面目に働いて、それなりに家庭を維持している。ワンチャンカナダにOFWを夢みているような、『善良系チョイ悪一般庶民男性』が、フィリピン共和国の法と秩序に従い、市中で、ごくごく平和的に合法ローンを組むとしよう。

2024年5月現在。フィリピン政府から正式な認可を得た業者の例をあげてみよう。

10万ペソの通勤バイクを新車で買うとする。頭金を、大枚1万P入れるとしよう。(おおよそ15万円くらいの「価値」と思っていい)残り9万ペソが元本だ。

これを最長の三年払い(比は5年ローンのようなものは、かえってアブナイのでMAX3年くらいのことが多い)を選択すると、この9万ペソに対して、支払総額は18万3780ペソである。たった三年ローンで、だよ。鬼である!ナニワ金融道の灰原より厳しいのである。

この金利でも、比人にとっては安いのだから、いかにメチャクチャなことか分かるだろう。

申し込みについてもエグい。雇用契約書、ID、銀行取引証明、DTI、GIS、所得税証明、一年以上の正社員(六か月ではない!)住んでいる家は一年以上住んでいる証明等、もうありとあらゆる書類を追加追加と提出だ。それも、後出しで、やれ補助書類だの追加だのと、ギャアギャア言ってくる。

この書類審査にやっとこ通ったとして、9万ペソを、たった18万ペソの返済額という「良心的金利」で貸してくれるわけだ。もちろん遅延したら車両没収である。

なお。この金利はノンバンクではない。ロビンソン銀行の金利である。

ロビンソンといえば、フィリピンでデカい顔をしている大財閥であり、比国内での信用は天を突くほどである。そのロビンソン財閥のロビンソン銀行が、シラフで言っている金利がこれなのだ。

フィリピンの銀行預金の利息が何故オイシイのか?それは、預金者から集めたカネの運用を、エグい金利で貸し出すからである。

庶民からすると、つまりこういうことだ。『市中のまともな銀行が合法ボッタクリをかましてくる以上、どーせ審査落ちするんだから申し込みするだけ無駄。書類なんか揃う訳ないし、だったら5-6から借りてしまえ』となるわけだ。だって貸してくれるところ他にないんだから。

ファイブシックスはマニラだけ?

「ファイブシックス」というのは語呂がいいので、比ではよく使われる言葉だが、ファイブシックスのカネという話題になったとき、このシックスの部分については、再度いくらなのか聞いた方がよい。

というのも、この金利部分については州によって異なるからだ。例えばルソン北部のヌエバ=ビスカヤやヌエバ=エシハあたりだと5-8になる。(ただし返済日数は長くなる。農民相手だからだ)ビサヤでもセブあたりだと5-7くらいに落ち着くようだ。

5-6というのは、あくまでもカネのあるマニラ首都圏だけの話であって、地方ではもっとエグイくらいに思っておいた方がよい。
ただし、金利は安いように思えるが期限が短いことも多い。

残念ながら、庶民層の比人の数学的能力というのは壊滅的に酷い。おててに持っている端末の電卓機能を活用できる人が少ない。(そもそも活用できる人は5-6から借りないように努力するんだけど)

 

そんで今日の相談内容

前振りが長すぎて、相談内容に触れるのメンドクサイんだけども一応書くか。

今日の相談は、ビサヤ地方で「5-7」で借りた比人女性が脅迫されて、貸し手が警察に言って被害届を出したという話であった。

そして、警察署内で借り手は貸し手の書類に署名したので、今後不安だという話である。

なるほど。5-7のカネを返せないので、警察署内で被害届を出され、その場で脅迫された。日本から送金して欲しい!こういう話なのだ。

基本的にフィリピン人の嘘というのはすぐにバレることを言うのだが、田舎の場合、もしかして真実かも知れないので検討を要する。

こういう場合、比人の素行調査、書面精査、警察照会。(これは相談に乗った時の三点セットである)

なんだけど、5-7の業者がヘタレだったのと、金額が5000ペソということもあって、一気に萎えた。7000送ってオシマイにしたら?ということである。

日本人が、5-6のカネを返せない助けて!と言われて援助する風景は普通にある。それを送る送らないというのは口出ししない。好きにすればいい。

 

業者側はポリスレポートで脅迫してきたらしいが、ビサヤあたりのレポートだと、PNPのクリアランス記載は気にしないでいいかも知れないしね。それにしても、5-6の業者が警察にいって被害届を書いたというのが最高に面白い。そしてその書面は無いという。

わたしの見立てでは、そもそも警察で書類を書いたということ自体が嘘だし、なんなら借りた事実すら疑っている。

比人が本当に困っている時というのは、基本、日本のストーカーがエビ反るほどの連絡をしてくる。エビデンス(証拠)も、イヤというほど送ってくるものだ。それこそウンザリするくらいに、求めていない証明を送ってくる。

今回の件は、警察だのポリスクリアランスだのと威勢はいいが、書面がなにひとつ出てきてない。

フィリピンという国は、ウンザリを通り越して、もうどうにでもしろ!というくらいに書類を求められる国だ。5-6だって書類はある。紙はなくともやり取りはある。そういう証拠がない以上、送金するのは勝手だけど、お人よしもいい加減にしたほうがいいんじゃないの?というのはちょっとある。

でも、カネの価値観なんて人それぞれで、日本人の場合、騙されてもいいという人もワリといるんよね。それでも関わりたいというか。なんとなく気持ちも分かる。そうやってカネを引っ張られ続けている人も沢山見てきた。まぁ本人の勝手でしょう。送金するなとは言わない。好きにしたらいい。オレオレ詐欺みたいなもので、いくら言っても当人が信じてるんだからしょうがない。俺は窓口銀行員じゃないんでね。もしかしたら本当かも知れないし。そもそも俺に相談するよりも、もっとベテランの在住者のほうがいいんじゃねぇの?

俺みたいな酔っぱらいに相談するのがまず間違っているのである。