ガチ投資話?金持ちフィリピン警察官がドツボにはまっている話(5)

(5)である。給与ATMカードを金貸警官が没収し、月利5%で儲かるはずだった話の続きである。

債務者は散り散りバラバラ。地元にいても仕事がない。コロナだから仕方がないという言い訳で、警察の威光も輝かない。さてどうするか。

 

この男は賢いので、まず、今まで稼いだお金を使い、金主にカネを返すことに決めた。

これは良い判断だ。事情を話し、小切手を回収しなければパンクしてしまうからだ。
現金と引き換えに、上官や外国人に『今度またよろしくお願いします』と頭を下げてまわったのである。

借主はまたいくらでも見つかるが、太い金主はなかなか見つかるものではない。そもそも、これはフィリピンの話である。カネが絡んでくると、命なんて鴻毛より軽い。特にこんな話は。

男のカネは、みるみると減っていった。仕方ない。警察をクビになってしまったら、このスキームをやり直せない。

—『うるさいヤツにはカネを返し、細々とカネを回収し、なんとかコロナを生き延びてやる』

この方針は良かったのだが、小さな問題があった。そう。嫁である。

フィリピン嫁というのは、ガメツイ場合は本当にガメツイ。息を吸うにもカネを取るんじゃないかという女が、このフィリピンにはゴロゴロしている。

果たして警官の嫁はというと「そういうタイプの嫁」であった。

このビジネス、信用が第一である。男同士の付き合い、浪花節で、なんとか乗り越えてきたのだが、嫁は、旦那の貯金が一日一日減っていくことに、全く納得がいかない。何故カネを返すのか!ということである。

フィリピン女の中には、一定数、こういう、明日のことより今日のメシしか考えていない人がいる。こういう人に、なにをどう説明しても無駄だ。カネが増えていくときは優秀なパートナーかも知れないが、落ちていくとき旦那を支えよう等とは、これっぽっちも考えないからだ。

この嫁どうしたか。

なんということでしょう。全契約書を持って、若い男とトンズラしたのである。逃げるのは恥じゃないし役に立つだけなのがフィリピンだ。日本ではマサカ!であるが、これフィリピンだったら「当然予測できた未来」である。だって契約は嫁さん名義なんだから。警官は金主から借りた借金だけが残った。そして、こういう事態は、フィリピンでは3日くらいでバレる。

なんでかっていうと、逃げた癖に、嫁がFBでペラッペラと余計なことまで喋り、若いオトコとイチャついてリゾートホテルの夕焼けなんて眺めちゃっているからである。

そして、決めセリフは「過去じゃなく、今のわたしを見て欲しい」—

いや、お前に、隙あらば逃げようとする債務者を追いかけ、上手にコントロールする器あんのかと。旦那の七光りのおかげで、いままでオイシイ思いしてきたんちゃうかと。そして自分がうまくいかなければ「全ては愛」とかいって旦那んとこ戻るんちゃうんかと。そもそも持ってきたカネ無くなったらどうすんのかと。それに大体、若いオトコにも彼女がいて、オバチャンカネ持ち逃げされるんじゃねぇのかと。

というわけで、警官は、愛する伴侶まで失ってしまったのである。

 

さらに問題が起こった。というより警官も知らなかった。

フィリピンのコロナ、ロックダウンというのは西側最長。約2年という、信じられないほどの長さで移動制限があったのだ。
このままいけば、不渡りを出してしまう。出してしまえば銀行口座は凍結される。

そうなれば—つまり、カネを返せと金主から詰められるわけだ。
こういう商売の場合、例えば中間代理店みたいな人も存在する(自分が2%取って金主に3%渡すような人)ので、手広くやっていた分、顔も見たことの無いようなヤツが来る。こういう人らには、警官だからなんてハッタリは通用しない。ほとんど全員警官となにかしらのコネを持っているし、逆にクビにするよう圧力をかけることもできるからだ。

そして、コロナ下で一年が過ぎたころ。ついに彼は『飛んだかも知れない』という話を耳にした。

その後、彼の消息は知らない。

 

この話、彼がいま何をしているのかという続報があれば、また書きたいと思う。今日はこれまで。

お金