日本の温泉でブルースリーになった話

今回帰国して、私は実家にいった。久々の家族水入らず。団らんであった。

私は母と一緒にお墓巡りにでかけた。
散々、アレが死んだコレも死んだという話を聞かされた。ウチは信心深いという訳ではないが、ワリと檀家としての務めを果たしている珍しい家なので、お寺のここを寄付したアソコを寄進したという話から始まり、いかに俺が葬式に参加していない親戚不幸モンかを思い知らされた訳なんだけども、まぁそんなことはどうでもいいのである。

その寺巡りが一段落した際、帰りに温泉に寄ろうということを提案したら受け入れられた。やったぜ!なのである。

 

よし。風呂だ。温泉だ♨わーい

海外在住者にとって、日本の温泉が、どれだけ心を癒すことか。
自宅の風呂でも狂喜乱舞なのに、なんと温泉である!

オ….ン..セン….?等と、もはや忘れかけていたワードが、現実として自分が体験できるのは凄いことだよ。

ラグーナにある、水着を着て入る温泉もどきなんて、日本の前では赤子以下の話である。あえて言おう。カスである。

 

そもそも今回の帰国は冬であった。こんなんもう行くいかないだろ!

ということで、お寺巡りのご褒美として、まんまと温泉に行くことになった。

いったところは、まぁ地元の人しかこない、いかにも自治体サンセクが運営しているといった体の施設。お値段は130ペソであった。俺にしてみれば、タダ同然ということである。(※マニラで、ただお湯を沸かした民間の風呂に入る最低額は1340円=500ペソが相場)

入り口に下足箱があって、100円入れて鍵をかける方式なのだが、誰も100円を入れてない。女性でさえ、勝手にブーツを突っ込んでいる。

”—-これだ!これでなければな!”感が半端ない。価値のあるものを放置して、誰も盗まない社会というのは本当に素晴らしいことだよ。

次。更衣室に感動だ。鍵がない。もうさらに感動である。普通に財布とか置いてあるのである。
一応、100円払うロッカーみたいなのは(またも)申し訳程度にあるんだけど、だれも100円入れてない状態で財布が突っ込んである。
むしろ俺の目の前に、半開きの財布から、なんならクレカとかスイカとか見えちゃっているのである。

そして更衣室にはCCTVが無い。いやマジでなんの防犯もされていないのだ。

油断である。もう、思いっきり油断である。いいのかお前ら、こんなに油断していいのかと問いたい。

いいのである!日本なんだから!

もう、風呂に入る前から気分は最高だ。ああ、日本に生まれて良かった。

『湯舟に入るまえにかけ湯をしてください』と書いてある張り紙が目に入る。
そうそう。そうでないと。

俺は丁~寧~にかけ湯をする。もうかけ湯だけでかなり満足している俺がいる。こういう儀式でさえも楽しいのだ。

そして、いよいよ湯舟だ。

たっぷり税金かけました自治体サンセク風温泉だけあって、天然かけ流し、掛け値なしのホンモノ温泉。

—-フォー!

アチャォ!!!

フォ—?!アッチャーーーォ!!

 

なんだこれ?メチャクチャ熱いのである!!俺はブルースリーのごとく、アチャーフォ?!なんてやってしまったのである…

もちろん、こんなことしている人、誰もいない。その辺のジジイでさえも、肩まで浸かっているのである。

やばい。このままでは、ジャンプ裏の広告「ひ弱な男子」そのものである。

え?私の温泉体感温度、低すぎ….?

ええいとばかりに温泉に入った。ら—-最初は熱いが、気持ちいい。アッそうだこれだった。

そうだ。風呂というのは、このくらいの、入るときちょっと熱いと感じるくらいが男にとってちょうどいい温度であった。

俺はそんな基本中の基本も忘れてブルースリーになってしまったのだった。

あーーーー….最高だ。シャワーじゃ絶対こうはいかない。

しばらくして、業務用リンスインシャンプーで髪を洗っていたら、さらにヤバイ張り紙を、目ざとく発見してしまった。ああ。露天風呂である。

お外で露天風呂!つまり雪見風呂である!!

もうね。これが180ペソとかね。どうすんのこれ。冬の日本で雪見露天だと?!マカティのラセマに小一時間説教モンである。

当然俺は冬の雪見露天風呂とシャレこんだ。

外なので湯の温度は低めになってしまう。が、不満はない。さっきまでブルースリーになっていたのに勝手なもんだ。充分温かい。
空を見ながら温泉。会話も地元の訛りが心地良く聞こえてくるのも良い。ああ、本当に日本なんだなぁーという帰国度マックスである。

満足して更衣室に戻る。財布もなにもかもそのままである。盗まれてない。この当たり前がまたうれしい。

 

 

ということで。ここまでが前置きである。

俺は思った。フィリピンで、温泉は無理としても、限りなくコレに近づいたことを、エッブリシングやらなければならないと!!

いやマジで、日本人と風呂は切っても切り離せないことを、なおさら固く誓ったのであった。

そんでまず、いきなり安っぽくなったとか思わないで欲しいんだけど、この風呂である。
これは小さいながらも足を延ばして入れるビニール風呂で、この所有者は「ノートパソコン持ち込んで、何時間でも動画見ながら浸かってます」という。彼なりのストレス解消なのだ。

次に。

これを風呂に入れるとたちまち湯温が上昇するアレである。(日本にも工事現場系でよくある)
比のシャワーでは日本の湯温は実現が難しいが、これで追い炊きができる。つまり土曜に入って再度日曜にもビニール風呂とシャレこめる優れものだ(200ペソくらいで売っている)これさえあれば、別にフィリピンでなくても、世界のどこでも日本人好みの風呂を実現できる!

ただし。コレ、取り扱い注意。放り込んで忘れるとお湯の温度は沸騰するまで上がり続ける。
また、かなり威力があるというかありすぎる。コードまで熱くなるくらい。(他のタイプも同様)空焚きしたら、数分で真っ赤になるんだからものすごい。

この威力であっても、水のチカラというのもまた凄いので、湯舟に入れると対流が起き、溶けたりしない。
ビニール袋の底にロウソクを当ててもビニールが破れないのと一緒で、中学理科の話である。ただし、この棒とビニールが直で触れ合うと、当然溶ける。つまりかなり危ないシロモノなので『追い炊き忘れた』は絶対に通用しない。だからキッチンタイマーはマストである。買うならセットで買うように。

さらに危険なことを言う。これを放り込んだまま追い炊きして、自分が入浴だけはしないほうがいい。もしも漏電したらどうなるか?今日が命日間違いなしである。
水と電気の親和性を語るまでも無いだろうが、これが漏電したら確実に死ぬ。電源を切り、本体を湯舟から安全な場所に避難させてから、安全な風呂に入るのが大正解だろう。

 

ほんで。この取り扱い注意追い炊き棒(絶対に使うときはキッチンタイマーとペアで買うべき)は、発展途上国ビニールプール風呂と相性がよい。なにしろ水から風呂が作れるからだ。そこに、日本の薬局でズラっと並んでる、安っぽい248円くらいの温泉の元入れてみ?

これはもう天国なのである。

取り扱い注意ではあるが、チッキンタイマー、追い炊き棒、ビニール風呂の組み合わせは、途上国住において神の配分といっていいだろう。

以下のことを守ればよいだけだ

1.全部買う
2.お湯シャワーを全開にして湯を張りつつ、追い炊き棒で湯温をあげる
3.タイマーを絶対にセットする。絶対に!できれば二重三重にセットするくらいで良い
4.いい感じになったら追い炊き棒を完全に水から遠ざけ、安全な位置に避難させる
5.目の前にホカホカ湯舟がある
6.もったいぶらずに温泉の元なんかを投下する
7.天国

 

 

ついで言うと、ビニール風呂は予告断水の時、トイレに隣接していることも相まって、プールからバケツで水を汲み、階段で自宅まで運ぶという地獄を軽減することにも有用である。

 

 

しつこいようですがお断り

追い炊き棒は最高で必須ですが、いかにも危ないものです。感電は当然として、放置も相当危ないものです(水が一時間で風呂になります)安全装置も一切ありません。海外は無責任とはいえ、二重三重にタイマーなり監視なりをお願いします。正直いって危険物なんですが、風呂に入れると「オオー便利!」という、二律背反なシロモノです。よろしくお願いいたします。