フィリピンの中絶とは?

世界のどこでも、男と女がいる限り、新たに子供ができるわけなんだけども、それを望まない人だって当然いる。
ここフィリピンでは、日本よりも中絶するのは厳しい訳だが、実は完全に違法というわけではない。
(母体が危険な場合においては中絶が許可されている。当たり前の話と思うなかれ。この位保守的なのがフィリピンである)

それより問題なのは、やる医者自体が少ないということだ。法的に合法となっても、肝心の医者がいなければ意味がない。

フィリピンでの中絶というのは、カトリック教会らによって常に邪魔されているので、まず統計自体が少ないのだが、
一説には45万人程度の女性が行っていると言われていて、WHOなんかは80万人くらいいるんじゃねぇのかと言っている。

なにしろ15歳くらいで、ボコボコ子供を産むことも、決して珍しいとは言えないのがフィリピンである。

比の場合、レイプされただのなんだのという場合、「望まれない子供」とはならずに産んでしまって育てるのが一般的。
堕胎の理由はほとんどの場合経済的理由だ。あまりに産み過ぎて、さすがに育てられないというわけだ。

そういう女性のために、比では堕胎薬を売るNGOがある。

断っておくが比で、堕胎薬は認可されていないんだけども、このNGOは信念を持ってやっているので、どうも取り締まれないようだ。
問題なのは、このNGOが売る堕胎薬は数錠で、しかも4500ペソである。正直いって、かなり高い。
(※それでもやらないよりいいのだろうか?)

 

じゃあどうすんのよ

なにしろ「中絶したい」なんていう需要は、途切れることなく永遠に続く。その需要は、世界各国どこでもある。
実はフィリピンでは、中絶という手段ではなく、流産という手段を使って産めなかったとする手法のほうが一般的である。

流産であれば、全てにおいての言い訳が利くからだ。

つまり、非常に危険だが、比の女性は民間療法によって流産させるというということが、いわば伝統的に行われているといっていい。

やりかた

やりかたは簡単だ。日曜日に教会に行った際、アヤシイ薬を買って飲めばよい。
この堕胎薬は、決まって教会周辺に売っている。(逆にいえば教会周辺以外には売っていない)

こんな具合である。これはちょっと貧相な写真で申し訳ないんだけども、実際には「いかにも」という感じで売っている。
(ので、日曜教会に行く読者の方は、是非来週にでも注意深く見ていただきたい。なお当然売っていないところもあります)

ハーバルだのなんだのと書いてあるし、男性にはなにも言わないし相手にしてもらえないんだけど、この「なにも書いていないアメ色の液体」は、堕胎薬である可能性がある。
(ただし似たようなハーバル系の液体も売っているので紛らわしい)

これ、中味はただの油であるw そこに、いわゆる妊娠初期にだけ効果のある堕胎薬を溶け込ませてあるわけだ。他にもなにやら民間土着エキスが入っているらしい。
これを一気のみすると、なんとたちまち流産するわけである。物凄い話だ。

正直いって危険極まりない。さすがにコレは無しなわけなんだけども、比の女性にはこれしか手段がない。
そして、このやり方は、実際流産できた人は必ず後輩に絶賛して勧めるので、需要も相まって途切れることが無いのである。
わたしは、この液体を売っている有名教会を数軒知ってるんだけど、一応書かないでおく。

 

実際このやり方はどうなのよ

このやりかたなんだけど、妊娠初期についてはかなり有効なようである。だから、もしかして出来ちゃったかも?となった女性は
彼氏のカネで教会に直行して、このビンを一気飲みすることで、サクッと流産するようだ。
ひとくちに流産といっても、自宅で処理するわけで、それなりに血まみれになるようだし、不潔な環境で医療知識ゼロでやるんだから、精神的にもキツいとおもうんだけど。

なにしろこれをやるのはせいぜい20代までの女性であるので、エイヤッとやってしまうのだろう。おそらく相当死者も出ているはずである。
こんなやりかたで良い訳がないのだが、当事者にしてみると、まさに目のまえの自分自身の問題であって、それは教会のクソ怪しい瓶を飲めばいいという話になってきて、放置すれば流産できなくなるという時間的猶予も考えると、エイヤっと飲んでしまうのだろう。問題がおこったとしても、20代という若さがあるので、なんとか乗り越えてしまうようだ。

このアヤシイ薬はなんなのか?

以前、わたしは、この魔法のように堕胎できてしまう薬が、漢方薬とセットになって、土着民間に流通している風俗に大変興味をもって、かなり調べたことがある。

なんでかというと、当時、私は石井光太氏のデビュー著書「物乞う仏陀」(東南アジアの物乞いに話しかけ、仲良くなって密着して本心を聞く話である。必読である!)に、雷を撃たれたような衝撃を受け、『いつか自分もこんなノンフィクションをモノにしてみたいものだ!』と思っていたからだ。わたしにとって石井氏は、憧れ以上の作家である。

そういう意味で、当時、比の堕胎というテーマはぴったりだったのだ。わたしは、この石井氏を大変尊敬しているので、その真似事をやってみたかったのである。

そして密着してみると、どうやらこの教会堕胎薬はサイロテックという薬を砕いて溶け込ませているようだということが分かってきた。

しかし、それまでだった。

わたしは石井氏のように文才もなく、教会のハーバル売りに密着する根性もなく、「あの薬」を売っている仕入れ先(あるに決まっている)にたどり着くこともできなかった。

何故なら、わたしは職業作家ではないし、それを突き詰めて、なにか世に問うという覚悟も無かったからだ。

 

 

※強いお断り
記事に紹介したアメ色漢方薬を、女性に飲ませたりする行為は、法律云々に関係なく常識的にも倫理的にも「やってはアカンこと」です。やらないでください。
本記事は比の堕胎風俗について述べたエッセイであり、あなたの個人的ちんぽこトラブルを単純解決するためのものではありません。
はっきりいって似たようなものが(本当に)沢山売っていますので、比に旅行に来てお土産に日本に持ち込んだとして、あなたが期待する効果を得られない場合も多々あります。
この記事を参考にして、妊娠した女性を流産させようという悪意のあるひとがいるかも知れません(それは人の一生を左右する重要なことです)ので、肝心なところはフェイクを入れて書いてあります。