フィリピン飲食起業相談(1)

フィリピンにいると、トラブルが起こることが多い。

というより、トラブル解決ばかりである。

在住5年目くらいは、もう本当に、月の半分くらいはトラブルの解決をしていた気がする。

今日だって、近くのビレッジの水道が止まったとかで、俺は朝っぱらから水を運んでいたのである。

フィリピンでのトラブルというと、なにか犯罪関係なんじゃないかと思う人が多いだろうが、
実際そんなことはマレである。ほとんど全部が生活に関わることなんである。

 

マニラでのトラブルとはなにか

わたしは一時期(いまもそうだけど)マニラでのトラブル解決を生業としているところがある。
これは別に自分で自称しているわけでもなんでもないんだけど、マニラに住んでいると自然とそうなるのである。

全部の場合無償であるが、日本人の皆さんはお優しいので、足代などと言ってお金をくれることもあり、
それは私の収入となっている。トッパライなので都合の良いお金である。
(とはいえ、本業のほうに時間を使ったほうが実入りは良いので、これはお付き合いという側面が強い)
もちろん一銭も払わず、わたしを都合の良い便利屋と思っている人も多い。
(全員、年配者である)

そのトラブルというのは、ほとんど全部がしょうもないことである。

マフィアに誘拐されただの、サンフェルナンドの拘置所にいるだのといった、心躍る相談など無い。
大きな話でも、せいぜい金銭トラブル程度のことである。

一番多いのが、ネットにつながらないという話である(笑)
ネットというのはもはやライフラインなんだけども、これがつながらなくなるとかなり困る。
そして、ネットにつながらないトラブルというのは、オンラインで解決できない。

だから出張して、世話を焼き、つながるようにする。

 

他の相談として多いのが、儲け話である

やはり、海外で一発当てたいという人は多い。多いというかほとんどそうである。
先週も飲食業というか、そういう話が出たんだけども、最近は「凄いですね!」しか
言わなくなっている自分がいる。

だって、余計な言質を取られたくないし、会ったばかりの人にダメ出しをしたくないからだ。
「マネーの虎」じゃないけども、退職金握りしめている人や、前途有望な若者に、
『あーダメダメ!あんた何にもわかってないよ』と、偉そうに上から話をしたくない。

そうですか、頑張ってください。これだけ言っていればいいんじゃないのと思っている。
おそらく、海外に住んでいる日本人というのは、みんなこんな感じになるんじゃないかな。
とにかく関わってはいけないのだ。

そもそも成功したいという人は多いけど、わたしに言わせると、
なにをもって成功なのかもわからない。
だって孫正義や三木谷だって、おそらく本人は「成功していない」というだろう。

お金を持っているひとというのは、使わないからお金を持っているのだ。

豪華なオフィス、オンナがヨロめく高級車、全身黄金聖闘士みたいなブランドモノで
かためているのはお金持ちじゃなくて、お金を使っている人である。
通帳に何十億円もある人は、ブランドモノなんて買わない。アピールする意味がない。
そもそも忙しいので、服や装飾品なんてどうでもいい人の方が多いものである。

お金持ちってのはね。お金使わないから持っているんよね。

 

というわけで前置きが長くなったが、そろそろ本題といこうか。

マニラで飲食やりたい人

マニラで飲食やりたいという希望者が、相談の中で一番多いんだけども、
飲食というのは経営の基本みたいな業種である。

だから、経営学と実学の両方を分かっていれば、少なくとも失敗することはない。
あとは信頼できる(笑)名義人でもいれば良い。

マニラの場合、それに語学等も加わるが、それは覚えれば良い話。さほどのこともない。
外国人はどんなに頑張っても(いや必死の努力があれば別だけど)ネイティブには
なれないんだから、だいたいのことが分かればそれでいい。
それより人を見る目や、ある程度の海外経験のほうが大事である。

日本で、国金でカネ借りてラーメン屋やるような愚が、マニラでは通用する。
海外は緩い部分もある。何が緩いかって?

なにしろ日本人がやっているという一点だけで、こっちは信用しているんだから、
はじめっからリピーターが見込めるのだ。

しかし、それだけだと続かない。だって日本人ってのは強力なリピーターだけど
数が少ないのだ。

かといって、現地に媚びれば日本人は離れてしまう。

マヨネーズの乗った寿司なんて俺たちの文化じゃない。
(とも最近は言い切れないけどな)

だから、いろいろ創意工夫するわけなんだけども、まずダメなのがメニューを
増やすこと。これは一番ダメなんだけどみんなやる。

塩も味噌も醤油も豚骨も売るラーメン屋が、まともな仕込みしてるハズがないだろ?

あと24時間営業と、酒の無許可販売。このあたりはもうセットである。
それでも客が来ない。何故か?場所か?そうじゃない。マズいからだ。

そもそもメニューに写真すらない店も多いしカネを使ってない。
(メニューにカネを使わないのはコンサルが入っていない証拠でもある)

メニューを増やすなら「仕入れそのままでメニューだけ増やす」ワザが必要なんだが、
そんなイロハすら知らない人が多い。

見栄をはって席数を多くして、マラテやマカティなら客が来るだろうというお店が
これまで沢山潰れてきましたけども。

そんなことやっている間に、飲食のカネを出したヤツ(大抵がド素人である)
海外特有のトラブル、自分自身のメンタル、従業員のわがままなどによって
めでたく潰れていくわけだ。

 

わたしは、飲食は3つに分かれると思っている。

戦略的にガチでいく路線と、職人路線のふたつ。あと食堂路線かな。

バカキレイで、なんぞキレッパシの木片に、墨で「純和風なんちゃら屋」なんて
書いている店よりも、茶色いコップの水道水がセルフサービスで480円ランチ
やってるほうが、はっきりいって客が来る。

わたしは福岡で、一種類のラーメンしか出してないお店にすら遭遇したことがある。
(客は注文すらする必要が無い)これは相当儲かってるなと思ったものである。

飲食というのは、人間の知恵というよりも、始める前の観察力がなにより大事で、
勝負はやる前からほとんど決まってる。
(立地がどうのというヤツは、ほとんどなにも分かってない)

そこから上に行けるのが知恵のあるヤツである。

例えば割れる食器のストックを、客席のケツの下に収納しておこう等という、
ナイスアイディアをを考え付くようなヤツである。
(なお、日本のファミレスは全部そうなっている。あのベンチシートを
バカっと開けると、お子様セットのオモチャだの、食器だのが入っている。
倉庫を借りる必要がないのだ)

こういう細かいノウハウというのは「海外経営コンサル様」はまず無理である。
何故ならバカだからだ。

バカに相談して、その通りやったらあなたの店は潰れるのである。

そんなことをするよりも、普通に海外に住んでいる経験者から話を聞いた方が
早い。日本でダメでも?ああん?海外ならなんとかなるだって?

その通りである。

でもそれには、ある程度のノウハウはあったほうがいい。

ま、いいや。長くなったから、続きはまた今度。