バランガイの基礎知識(1)

フィリピンでは、三年ぶりとなるバランガイ選挙が行われている。
ではそもそも一体、バランガイとはなんぞや?ということについて、久々にブログを書きたいと思う。

その選挙のおかげで酒を買えないんだけど、なんとか読者様より貰ったビールを飲みながら書こう。

 

 

バランガイとは、よく「町内会」なんて言われるけども、日本の町内会や隣組と、比人のバランガイの
認識というのは全然異なっている。

そもそもバランガイの歴史というのは古くって、フィリピンが「発見」されるより以前から存在していた。

ってことは、国家という概念がフィリピン人にまだ無い時代からあったわけなので、比人にとっては
フィリピンより先にバランガイという村組織のほうが歴史的にも馴染みのあるものである。

 

世界的には珍しいんだけど、フィリピンにとって、バランガイというのは無駄でもなんでもなく、
もっとも身近な政治組織でもある。そして、ある程度役にも立っている独特の組織といえるだろう。

そもそもバランガイというのは何かというと、簡単にいえば地元民の自治組織である。
(こう覚えておけば、多分一番理解が早いだろう)

比人のみならず、外国人も、比にいればどこかのバランガイには必ず属することになる。
バランガイの無い人はいない。海外の、ごく短期滞在の外国人以外はバランガイの一員となる。
私もそうだし、大多数の読者もそうなっている。

現在、フィリピンのバランガイは約42000もある。物凄い数である。
だから、比を理解するには、バランガイをちゃんとしっていなければならない。

 

なんでバランガイなんてものがあるの?

行政でいうと、比はこうなっている。ざっくりいえばこうだ。
国>州>市区>バランガイ
つまり、市の下の、細分化されている行政がバランガイだ。

「市でいいじゃん」確かにそうである。普通、市区町村が行政の最低単位である。
世界のどこも、大体そうなっている。しかしフィリピンは違う。

国があって州があるのではない。
バランガイの集合体がフィリピンという国家を成している。
このように理解するのが、おそらく正解だろうと思う。

比人にとって、もっとも身近な政治とはバランガイなのだ。

地縁血縁大好き国家フィリピンならではの制度がバランガイ

バランガイというのは、超地元民だけの組織である。地元民以外はいない。
冗談抜きに全員顔なじみ、というバランガイばかりである。ほぼ同じ小学校卒!という位なんだから、
かなり濃い行政だと想像できるだろう。その通りである。

何故バランガイが必要なのかというと、まず災害や犯罪に対する備えについて、バランガイは
非常に使い勝手が良い。

なにしろフィリピンというのは犯罪が多い訳なんだけども、警察がすぐにすっ飛んでくるわけではない。
火事も救急も同様だ。市区町村の行政サービスというのはクソ遅いので、モタモタ待っていられない。

ところが、地元の道も道路も住民も知り尽くしているバランガイという組織があると、あら便利。
少なくともすぐに駆け付けてはくれるのである。

細かい諍いも、わざわざ裁判なんてしなくていい。バランガイが仲裁してくれる。
「悪ガキのやらかし」も、ガチの警察ではなくバランガイ警察(というものがある)で大人しくなる。
このバランガイポリスというのは、特に停電や台風、洪水時に治安を守る役割を持っている。
(外で銃を持ち歩いて良いライセンスを持っている。これは比ではなかなか取れない許可である)

バランガイというのは、住民ひとりひとりに即した行政サービスをモロに提供してくれる、
うまく利用すればメチャクチャありがたい組織なのである。

 

住人の為ならエンヤコラ

バランガイというのは本当に町内会なので、住人の為ならエンヤコラしてくれることも多々ある。

有名なところでは病院脱走である。

比人というのは、高い医療費を払えないことが多いんだけども、それだと病院を出れなくなる。
すると、何故かバランガイポリスとバランガイ救急車が現れて、料金未払いの患者を
転院させてくれるのである。

高額医療費がかかっても、この転院脱走を繰り返すことで病院代を踏み倒し続けることができる
荒業があるのだが、この手のことについてバランガイは協力的である。

比では法律云々よりも、地縁血縁が何より最優先されるので、馴染みのバランガイというのは
心強い味方である。

住民票はバランガイ

日本人でも必要なものとして住民票がある。
日本では市区町村がそれを担うが、フィリピンでは市役所が住民票を発行するわけではない。
バランガイが発行する。

一応簡単な審査があるので、適当こいてバランガイの一員にはなれない。
具体的には、賃貸の場合、家の契約書が必要となる。
(ほとんど全ての場合、大家がやってくれるのでバランガイオフィスに行く必要は無い)

これをバランガイ・クリアランスといって、あまり信用されない書類ではあるんだけども(笑)
このバラクリが無いとポスタルIDなんかは発行されないので、それなりの価値はある。

 

バランガイについてちゃんと書くと長くなるので、続きはまた今度書くことにする。