フィリピン交通事情とは、具体的にどのくらいヤバイのか

ヒマな田舎警察が、取り締まり中なんて看板おったてて、
旧式のネズミ取りでボサーッと速度計測していることがある。

あんなやり方でも、それなりに停止させられていて、切符を切られている。

あのやり方がどうのこうの言うつもりはないけども、

もしも、スピード違反がまったく取り締まられない世界があったら?
と考えたことはないだろうか。それがフィリピンである。

マニラでハンドルを握って長いけど、スピード違反の取り締まりを見たのは、
たった一度しかない。

(NLEX入口歩道橋付近で、一度だけ計測して取締していたのを見たことがある)

今日は、そんなマニラの交通事情について書こう。

 

統計でみるフィリピン運転

まずは統計からみてみる。

指標として、もっとも分かりやすい「交通死亡事故」で見てみよう。

我が国の、令和4年の死亡事故件数は2610人である。

日本では、だいたい一日7人、ひかれて死んでるということだ。

(ソース:警察庁

ではフィリピンではどうなのかというと、ソースとしてPSAくらいしかないんだけども、
2020年のデータで約6100人死んでいる。一日16人死んでるというわけだ。

物凄く単純に言えば、日本より2.3倍ひかれて死ぬ可能性が高いということだ。

えー?そうなの?2倍くらいなんだー。

PSAさんが言うには、そうらしいのである。

でもちょっと待って欲しい。

マニラのほうが、日本よりも2.3倍アブナイ?たったそれだけ?
というのが実感である。

主要道路を徒歩で横切りまくり、高速道路で立ちションをしている国民が、
たかが日本の2倍しかないというのはおかしい。

そんなハズはないだろうと思うんよね。

このマナーで日本の二倍だったら、ウチの国の警察タダのバカじゃん。

 

だって、日本に住んでいたとき、死亡事故を目撃することなんて、滅多になかったけども、
マニラに住んでいると年に一度くらい遭遇するからだ。

おそらくこの数倍は死んでるんじゃないか

以前、トライシクル(サイドカー付のバイク)の単独事故
(横転するところまで全部目撃していた)を野次馬したことがあるんだけど、
最後まで警察が来なかった。

断っておくが、これは田舎の話じゃなくて、マニラ(首都)の話である。

写真の一枚も撮らなかった。
現場検証が甘いとか、そういう話ではなくて、警察自体が来なかったのである。

 

 

わたしは当時、数時間野次馬をしていたので全部事情を知っているんだけど、

1.死んだヤツは、飲酒運転の常習者であった

2.当日も呑んでいた

という証言。トライシクル乗り場では有名な話であった。

当日、このトライシクルは飲酒暴走して、まずバクラを轢いた。
(これは私が目撃している)

人にぶつかったことを認知した運転手は流石に動揺したのか。

ひき逃げしようとスピードを速めた結果、緩いカーブで、フワっと横転してしまったのである。

驚くべきことに、トライシクルが横転した程度で、人というのは死ぬのだ。

トライシクルの重さが首にかかった、頸椎骨折系だった。
外傷ナシだけど100%死んでるという有様であった。

「信じらんないだろ……死んでるんだぜ」というアレである。

 

人が道路で死んでいるんだから、当然野次馬もワンサカ来る。
誰も通報せずに、ジっと死体を見ているだけ。これは風物詩でもある。

(比では目撃者や通報者は裁判所から召喚状が来る場合があるので、通報する人は少ない。
事件を見つけるのは、あくまで警察の仕事というのが第一義である。
市民の良心があるので通報してくれる場合もあるけど期待禁物)

 

結局、30分くらいしてから、バランガイの車が来て、
ああじゃこうじゃワイワイ相談して、遺体を車に積んで、遺族の家にブーン。直送である。

ええ?である。

人が死んでいるのに、警察も救急も無いのである。
いくらトライシクルの運ちゃんだって、そりゃないよという話である。

「だって事故でしょ?死んでるでしょ?」
はい。その通りなんだけど。
事件性があるかどうかなんて、バランガイの兄ちゃんが判断することじゃない。

警察と救急というのは、せめて仕事したフリだけでもしなきゃいけないと思うんだけど、
この単独事故については、結局最後まで何も来なかった。

そして、トライシクルは片付けられて、本当に事件が終了してしまったのである。

翌日。新聞にもネットにも、その事件は一切載ってなかった。当然だけど。

ひとりのトライシクルドライバーの死は、こうして終わったのだ。

 

ってことは、これってPSAに統計された死亡事故にカウントされてんの?

ということである。

日本なら100%死亡事故としてカウントされる。
(おそらく第一目撃者のオレは、簡単な事情聴取くらいされて、半日潰れるだろう)

 

でもフィリピンでは、この事故がカウントされているかどうかは、極めてアヤシイと思うんよね。

 

バランガイの連中も、ある意味手慣れた感じであり、隠そうとかいう雰囲気ではなかった。
とうとうヤッたか!このオヤジ!なんて会話しかしてない。(そもそも真っ昼間の話である)
バクラは轢かれたのに、轢かれ損である。

この手の事故処理。過去何件も。いや何十件もやってきた風なのである。

だって。
わたしはこのバランガイに所属していたんだけど、バランガイの向かえにはPNPと軍のオフィスがあった。
事故現場というのは、そこから徒歩5分くらいである。

わたしはここの警察署から「困ったことがあればすぐに電話してくれ」と何回も営業を受けていたので
よーく知っている。オレの顔を見る度フレンド!と叫んでいたからだ。

そのフレンド達は、署の目と鼻の先で事故が起こったのに、巡査のひとりも寄越さなかった。
明らかにカネにならない案件ではあるけど、ひとりも来ないのには流石に驚いた。

「仕事やってる感」どころじゃなくて、やってないのである。

田舎の警察だって、一応スマホでチョチョっと写真くらいは取りにくるのに……

外国人の前では、M16をカチャつかせて「どんな小さなことでも言ってくれよ」と言う奴らが、
同胞が死んでいるのに何もしない。カネにならないとはいえ、これはオレの中で小さな衝撃だった。
ここまで何もしないのか!という驚きがあった。
比の田舎に住んでいたときでさえ、これはなかった。

 

裏返すと。
マニラだとこういう事故は珍しくないので、事件性がなければバランガイに任せているんじゃないか。

 

こういう死亡事故は、おそらくフィリピンではカウントされていないと思われる。
(だって記録してないんよ?)

そして、こういうバランガイ路地の事故というのは、当然頻発していると思われる。

ってことは、フィリピンの死亡事故6000人というのは、これは主要道路で起こって、隠蔽もなにもされず、
かつ統計として下から上がってきた数字ということになるんだから、
実際はこの倍。いや3倍くらい起こっていても不思議じゃない。

マニラでも適当な処理なんだから、田舎はもっと酷いだろう。

じゃあ2.5倍程度としてみると、フィリピンの死亡事故は年間一万人以上という数字になる。
(事故件数ではなくて、死亡事故件数の話)

一日40人くらいの死亡者。だいたいこんなくらいだろう。

タブロイド紙の事故記事

フィリピンにもタブロイド紙というのがある。日本に東スポがあるように、比にもちゃんとある。
このタブロイド紙では、昨日撃たれて死んだヤツ。昨日刺されて死んだヤツというのが時々載っているんだけど、
これは病院関係から取ってくる情報らしくって、なかなか精度が高い。
警察よりも、実際病院に運ばれた情報のほうがリアルである。

そういう記事を眺めていると、
マニラ首都圏では、だいたい一日50人くらいが病死・自殺以外の人為的な死亡案件が
あるんじゃないかな?というのが、俺の皮膚感覚だ。
(もちろんこれはオレの主観に過ぎないけども)
そんなに的外れな数字とも言えないんだけど、どうだろうか。

今日はビールと焼酎をチビチビしながら書いてます。