マニラでNTTdocomoの電波が入った話

よく読者の人から、「毎日数記事書いてて、よくネタが尽きませんね」と言われるんだけど、
ネタだけはありすぎて、いくら書いても終わらないのが私である。
書ききれない非公開記事は、この数倍もあるのである。これからも更新していくので暇つぶしに読んで貰えたら深甚なのである。

 

というわけで今日は不思議な話。マニラでNTTdocomoの電波が入った話を紹介しよう。

携帯がおかしい?

マニラの携帯トラブル相談数あれど、これほど不思議な話はなかった。いつものSMART/GLOBEの表示がおかしいというのである。
そんなもんほっときゃ直るという話じゃない。キャリア名がNTTドコモになるというのだ。それも複数からの話である。

実際見たところ、確かにDOCOMOという表示が出ている。驚愕である。
日本人なら誰でもお馴染みの電電公社が、このフィリピン、マニラに突如として現れたのであった。
そんな馬鹿な!という、携帯に詳しい読者もいるだろうが、これは実体験である。

「昔ドコモのSIM入れてたからですかねぇ?」なんて、なーんも事態を把握していない日本人が、私に質問をぶつけてくる。
そんなわきゃあるわけないのである!キャリア名が勝手に変わるというのは一大事である。変わってたまるか?
じゃあ日本でau契約の人が、今日softbankになってたらヘンだろっての。

携帯電話というのは、電波を受信するというイメージがあるけど、それは違う。逆である。
ケータイが電波を発信したリクエストの結果を、基地局が返信しているのである。
基地局というのは電波をバラまいているわけではなくて、周辺の携帯をキャッチしているイメージという理解が正しい。

つまりどういうことだってばよ?
「NTT DOCOMO」と返事している基地局が、一番近くにいるということ以外に考えられないのである!!

基地局が乗っ取られた?

わたしがまず疑ったのはクラッキングであった。いわゆる携帯の偽基地局である。
偽基地局?そんな馬鹿なというかも知れないが、それは日本の話。
海外では実際に偽基地局というものが存在し、データを盗むというスプーティングが現実として起こることがある。
ただし、だったとしたらSMART/GLOBEという表示に偽装するはずだ。
DOCOMOというのは、私たちだから知っている会社であるに過ぎず、外人だったら全く分からない話である。

 

それにしてもなんなのか?
わたしたちはDOCOMOの表示を睨みながら、腕組みして画面を睨んだのである。
スマホというのは、もう仕事でもなんでも「インフラ」だ。こういうことがあっては困るのである。

 

得たいの知れない「ドコモ」

相談をしてきた人らは、不思議と、みなエルミタであった。これは手がかりであった。

エルミタの人だけということで、これは「偽基地局のオソレアリだな!」というと、私の言うことを皆信用してしまってヤバイということになった。
わたしに確たる証拠があったわけじゃないんだけど、じゃあそれ以外になにがある。わたしは偽基地局説を広めた。
自分の知識からいって、それ以外ないと思っていた。

その日は午前中から夜まで、とにかくああだこうだと議論をした。
他の誰だオマエみたいな日本人も、次々不安そうに声をかけてくる。わたしは輪に入れて、不安でしたね大変でしたねと安心させた。
SMSをしてみたり、電話をしてみたり、通じることを思い思いに確認している。
いや電話はしないほうがいいという者もいて、掛けている者と口論が発生したりした。
誰もが、得たいの知れない「ドコモ」に怯えたのである。

 

 

そんな折、有力な情報が出てきたのだ。

安倍晋三首相が来比していた

当時、私たちの国のリーダーがマニラにいた。それもダイヤモンドホテルに宿泊しているというのだ。
私らはランドバンク本店近くにいたので、すぐ近くである。ってゆーかほとんど隣であった。

まさか・・・

まさか、日比関係の外交系秘匿通信絡みで、わーくにの情報機関がまるごと基地局ごとジャックしたんじゃないだろうか???
そして、わたしたちの官僚というのはマヌケだから、基地局名変更をしなかったんじゃないでしょうか・・・?

そんな馬鹿なといいたい。でも実際DOCOMOと表示されているのは揺るぎない事実である。
私たちはダイヤモンドホテルを仰ぎ見た。この窓のどこかに総理がいる。そのための通信障害だとしたら、全部辻褄があうのである。

だとしたら友軍のやらかしである。しかしホントにそうなのか?
俺たちの国がそんなことするだろうか?

 

 

ダイヤモンドホテルの不思議さ

このホテルは実に不思議なホテルである。マニラには星の数ほどホテルがあって、各国首相や大統領が止まるに相応しいホテルは、
他にいくらでもある。マカティのペニンシュラ、格式でいえばマニラホテル、元日系のドゥシタニ。
ソフィテルプラザも、落ち着いた良いホテルである。

フィリピン、マニラは一国の首都。世界展開しているホテルはほぼ全て揃っている。サービスを競い合っているといっていいだろう。

ところがダイヤモンドホテルというのは四つ星クラス。完璧なファイブスターではない。
もちろんいいホテルだけど、フィリピンにとってアメリカと並ぶ最恵国、現職の日本国内閣総理大臣が宿泊するホテルとしたら格落ちである。

それでも日本のVIPは、どうしてかダイヤモンドホテルを指定することが多い。確かに大使館から真っ直ぐ行きゃあ着くからいいんだろうけど
このホテル、政治家に利用されることが何故かよくあることに気づいたのだ。

そして、ダイヤモンドホテル周辺でDOCOMO騒ぎがあったとき確信した。
おそらく、このホテルは、警視庁警備部だの公安だのといった、安全、治安のプロがOKを出すホテルなんだろうなということだ。
盗聴系の話って、東側(中国ロシア等のゴロツキ国家)はホテル建築時に仕込むと言われているので、クリアなホテルってそうそうない。
アジアの国の場合、普通は日本資本ホテルに泊まるんだけどマニラって無い。(オカダマニラは使えないと思うし当時オカダマニラは無かった)
そもそもマカティのホテルだと大使館から遠すぎるし格落ちでもある。
(※伝統的なマニラ富裕層の価値感というのは、ロハス大通りに面している物件以外あり得ないという信念めいたものがある)

日本大使館が、マカティからロハスに移転した時点で、マカティのホテルというのは安全上遠いのかも知れない。
周辺にホテルはごろごろあるけど、保安上のホテルというのは限定される。

ダイヤモンドホテル。正直言ってパッとしないホテルである。古い上に高い。特別な感想はなにもない。
場所だけはいいけど、同じお金を出せばファイブスター泊まれるのである。マニラ湾の夕陽だけは見れるだろうけど、それだけのことだ。

日本の情報機関とも限らない

しかしである!いくらわーくにの官僚がマヌケだからといっても、あいつらは個別では優秀ではある。それしか能がないんだから。
となればドコモの異常さには、誰かが気づく(はずである)

となると外国。まー我々周辺国というのは敵が多い。韓国中国北朝鮮ロシア!この辺りの諜報員のほうが、よっぽど馬鹿そうである。
(諜報関係がエリート揃いで優秀というのは映画の話で、実際にはアホバカもたくさんいる)
このあたりの国が、日本に持ち込んでいる偽基地局を、設定変更しないまんまマニラに持ち込んだとしても、俺は驚かない。

日比でどのような話があったのかという外交の機敏の話は、領土問題を抱えるあの国なんかの本職のスパイなんかはガチで情報を取りに
来ている訳なので、偽基地局くらいなんでもないだろう。設定ミスっただけで。

つまりダイヤモンドホテルの情報通信セキュリティが良いので、敵国が日本で普段使っている偽基地局を持ち込んだんじゃないのか・・・・
いまでもそうとしか思えない。

 

そもそも安倍首相はダイヤモンドホテルに泊まっていたのか?

発表ではそうなのかもしれないけど、セキュリティからいうと、何故わざわざホテルを公開するのかというのも疑問である。
ダイヤモンドホテルは超VIPが泊まるホテルとしては微妙だからである。

外国のスパイ機関が、我が国の公式発表に踊らされ、周辺に盗聴網を敷いたということも考えられる。
なんといっても国家間の情報の奪い合いとなれば、マニラなんてなんでもアリである。

大体、スペック偽装というのは旧軍以来の伝統である。四つ星といって五つ星。日本が大好きな偽装方法である。

—ダイヤモンドにはいないんじゃないのか?敵のスパイが馬鹿で、ドコモの偽基地局を持ち込んで失敗しただけなんじゃ?

ああだこうだと夜はふける。内閣総理大臣も、大使館職員も、外国スパイも在留邦人も、時間だけは平等に過ぎ去って、
そうして総理は国に帰っていった。

 

 

元に戻る

首相が帰国したら、このドコモ騒ぎは無くなった。物凄く分かりやすく無くなった。
やはり政治がらみだったのだ。

相談者も、いつものSMART/GLOBEになったので「ああ良かった」と、わたしから離れていった。
中には、わたしに悪い言葉を吐く日本人もいた。そんなことはいい。
騒ぎの渦中、散々私に罵声を浴びせたひともいた。深刻な相談もあった。でも元に戻って三々五々解散していった。
日本人は情報はタダだと思っているので、別に私もなにも言わなかった。実際顔も覚えてない。
当時は3Gだったんだけど、ここでクドクドと携帯電話の仕組を披瀝する気にもなれない。
ただ、おそらく間違いなく、この事件は通信傍受だっただろうと思ってる。
それも予算がたっぷりある、探偵なんかではやれないガチ勢の仕業だろうと思っている。
日本の傍受だったら気が楽だ。自国だったら「オッ仕事してんな!」で終わりである。

しかし、外国だったらどうだろうか。ドコモの基地局を偽装して傍受だとしたら、これは怖い。
(※格安SIMなんてものは無かった時代です)

 

なにより国際政治の世界の一端を見てしまったような気がして、いまだにこの件は心に残っている。
推測も多分にある記事だけど、あとは読者の想像に任せて欲しい。