海外旅行保険悪用に巻き込まれた話

海外旅行保険というのは、海外に一度でも旅行したひとなら知っているだろう。要は海外でナンかあったら保険でカバーしますよ!というメチャクチャ心強い保険のことだ。
かなり需要のある保険で、空港で「1000円で自動加入マシーン」が設置されているほどだ。厳しい制限付ながら、クレジットカードに自動付帯もしている。
実はこれ、悪用されることが多い。今日はその話。

 

私がまだあまり海外に慣れていなかったころ、松井俊介というのと友達になったんだけど、彼は海外にいけばいくほど儲かるという、よく分からない人であった。
元々素性の分からない男でもあったんだけど、あるときお互い酔っぱらって、ズバリ聞いたことがある。youはなにしにマニラに来てんの??

 

果たしてソイツは、海外旅行保険でメシを食っている男であった。そんなことできんの?出来るのである。アレ盗まれました!これ盗まれました!と保険を申請すると、保険会社は全部お金を出してくるのだそうだ。だから彼は、いつも「友達を数人連れて」マニラに来ていた。「購入した証明のレシート」「警察のリポート」の二つがあれば、保険会社は満額出すのだという。
それを利用すれば、一回の渡航で百マン近いカネが入る。友人に渡す額は、たった二割だという。大儲けなのであった。

 

それでも友人はタダで海外旅行に連れて行ってもらえるということで。地元田舎ネットワークは希望者も多く、松井はウハウハなのであった。
(※当時はまだそういう時代であった)

ゴチャゴチャ言っているけど、つまり平たくいうと保険金詐欺である。

彼の相談ゴトというのは、PNPに払う賄賂分が減ったら、もっと儲かるので「どうにかならんですかねぇ~」という話であった。
保険会社が求める必須書類があるんだけど、それは警察に行った証明である。フィリピンでは一番軽い警察書類(ポリスレポートという)である。
日本なら、警察にいけば交番で書いてもらえる。配卒したての若すぎる巡査ちゃんでも、夜勤で書類にはしてくれる。それでも書類は書類だ。

ところがフィリピンの場合、ポリスレポートは巡査は書けない。いや書けるんだけど、日本でいったら巡査部長(つまりハコ長)の署名がいるのだ。その賄賂が惜しいのだという。
まぁそりゃそうだろう。

私はPNPの届けをしなくても保険が降りる方法を知っていたので教えてやると、彼は凄く感謝していた。「サスガッスネ!スゴイッスネ!」なんて言葉を連発していた。
別にわたしが凄いわけではない。事情があって届け出ができない場合であっても保険適用となるケースを、かつて何度か耳にしていたのでそれを伝えただけである。

こういう話というのは知識としてはとっても楽しいんだけど、実践するというのはまた別である。コイツホントにやるんじゃねぇか?という予感がして、話したことを早くも後悔していた。

私は知識として話をしたつもりだったけど、俊介の目はギラついていた。
「ぶっ殺すぞ!」といって、本当にぶっ殺すヤツはいないという常識に従って、ちょっとした裏話を話した位のことである。

女性には理解しがたいかもしれないけど、男性社会ではこういったアブナイ話なんてのはままあることだし、当時は私も若かった。海外在住の先輩ぶりたかったのである。
松井の上手に乗せられた—でも本当にやるとは思わなかったのである。

 

一本の電話

あー、お忙しいところ恐縮ですが、お尋ねしたいことがございます

ジャパンのナントカ海上火災から電話がかかってきたのは、その数か月後のことである。

「松井さんが(最高級ラップトップ名)を盗まれたという申請がありまして」

—–はぁ

「そのとき、あなたが隣にいたということなんですが、事実ですか?」

オプ(保険調査員)からの電話であった。

ハァ?全く身に覚えがない。

もちろん録音されているだろうけども、証拠能力の無い不同意通話で、しかも国際電話だから、うん俺関係ない。少し冷静になれた。
それよりも私の番号をどうやって知ったのだろうか?

具体的に、ドコソコのモールで何時何分ごろ、どのようにどうなりましたか?みたいなことを聞いてくるのである。
そんなもん「松井に聞いてくれ」である。こっちは口裏合わせもしてないんだから。

 

すぐに松井俊介に折り返した。オイ!お前ナントカ海上に保険請求してんのか?

「してますよ」
電話かかってきたんだけど?
「番号教えました」
オマエさぁ・・・マニラ来てたのか?
「いってません」

・・・・・(クソバカため息)

 

こいつ、とうとうマニラに渡航してもいないのに保険金を請求したのである。アホである。どうして一秒でバレる話をするんだろうか?

お前何回請求したの?
「何回だろ?多分・・・三回目です、あでもいろいろしてるから7回くらい?わかんね」

アホである。海外旅行保険は三回目で調査が入る。これは大原則なのである。
コイツは一年で三回請求したんだから、調査が入るに決まってる。しかも三回目はマニラの渡航履歴もないのだという。
マニラの渡航履歴がないのに、マニラで盗まれた保険金を得ようとして申請した。うーん。知能があるんだろうか。やってもいいけどバレずにやれよ!
どんな弁護士だって弁護できないだろう。そして俺は共犯になってしまったのであったw(略)

ちょっとここから先は諸々悪用となるので省略しますゴメンな

 

海外旅行保険詐欺の仕組み

これも書いたんだけど悪用防止で消しときますゴメンな