二回目のエアコン工事の日がやってきた。(1)はコチラ
ハマちゃんは、同じようにスズキのワゴンで登場し、エアコン取り外し工事を始めた。俺らも外で工事を眺めていた。なんでかっつうと、家の中にはすでにエアコンが無いので、外の方が涼しいのだ(笑)
俺たちはヒマだし暑いしで、適当に雑談をしていた。ハマちゃんはエアコンの取り外しに苦戦していたが、それは彼の技術が未熟だからではない。いろいろややこしかった上、しっかりと施工してしまったので、外すのが大変というパターンであった。
二回目ともなれば、初対面ではない。いわゆる「顔見知り」となる。
ハマちゃんは、ずっとどこかに電話をしながら、エアコンを外しながら、俺らとの会話もしながら……という感じで忙しかった。
とりあえず、いまハマちゃんが盛り上がっていることは、工事代金を踏み倒した日本人がいるという話であった。(何故そんなことを我々に教えるのだろう? 全く関係ない話だ)
なにもかも全部俺がやったのに、カネを払わないという。だから殺すというのだ。あっそう。へー…… 当時、金額もハッキリ言っていたが、スマン思出せない。それよりも、だ。
———ん? いまなんつった?
フィリピンにおいて、殺すというのは文字通りの意味を差す。比喩ではない。
ハマちゃんは、俺たちの目の前で、殺しの手配を始めてしまったのだ。ちょっと席は外したが、丸聞こえである。おそらく聞こえるようにしたのであろう。
俺とツレは顔を見合わせた。もう、これだけで、今日の酒のツマミの話になるな! という感じだ。
ハマちゃんが電話から戻ってくると、「え、殺すんスか?」と、ツレがすぐに質問した。
「ええ。約束、守りませんでしたから」ハマちゃんは事もなげにいう。
「ヒトを、殺すんですか? 日本人を殺すんですか? 殺人という意味で、です」
俺は、今晩の。いや、ハマちゃんが帰ったあと、すぐに始まるであろう呑み会の話題に花を添えるべく、念を押して付け加えた。だって、こんなこと言うヤツいねーよ!
コレ。小説やドラマの話ではない。現実の話である。現実では、ヒトを殺す話というのは他人にしないものである。絶対に、だ。これはもう、ネタである!
この濵井さんというヒトは、俺らの中で、半分ネタ化していたのであるが。二日目にして、彼は俺たちの想像を超える舞台を演じはじめてしまったのである。「期待以上」という他ない。(騙された人すいません)
もしも反省会が出来るとしたら、俺はハマちゃんに言いたい。
海外初めて観光客ならワンチャン騙されるかも知れないが……比に住んでいる一般邦人に、ああいう小細工をされたら、これはもう、笑いを取りに来ているんだな? という理解を(俺とツレは)していた。コレ絶対あとで、ハマちゃんから「ハイ在比邦人釣れたー」とか言われる可能性あるな! くらいに思っていたのである。だってどう考えてもネタにしか思えないからだ。
日本人社会の男性同士。ましてや海外。ましてやマニラ界隈である。この程度の罠を仕掛けておいて、
『俺がマジでやってると思った? いつから気づいた?(笑)』 なんていう、若者イジリ大好きな、チョイ悪オヤジだっているのである。ハマちゃんが、この類である場合も大いにあるのだ。
俺とツレは、ハマちゃんが、いわゆる「昔のノリを大真面目にやっている痛い日本人のフリをして、若者をからかってネタバラシするパターンだな」という理解をしていたのである。
「そうですかー凄いっすねー」俺とツレは、抜け作先生みたいな目をしてハマちゃんに対応していたら、ハマちゃんも、俺らの態度に気づいたのか。
「ま、50万(円)くらいッスよ。なあ?」と、嫁に声をかけた。
(きちんと書いてなかったが、この場には嫁がハマちゃんの助手としており、クルマから工具を取りに行ったりしていた。酔っ払いブログなんでごめんな)
「(殺し屋の手配は)どのへんですか」と聞いたら「トンド」だという。おおおおおお……
「え、お金かかりますね」と、ツレがワザと言ったら、ハマちゃん。
「ええ。俺は法律事務所やってますから。日本大使館にお金を貸せば戻ってきますから」的なことを言うのである。(厳密には覚えてないが)
え? 話、飛んだぞ?
なんでも? 大使館に駆け込んできた困窮邦人にカネを貸すという「人助け」があり、それを一手に引き受けているのというような話であった。帰国後金利を付けて返金してもらうらしい。なるほど賢い。賢過ぎる。邦人の為になるではないか。100兆円くらい預けたい。それにしても、その仕組み。俺、在比界隈で一度も聞いたことが無いんだが? 一体いつからそんな話が出てきたんだろう? マジだったら5000円くらい、俺出すよ? いや!6000円出してもいい!
「……素晴らしいですね! 今、日本大使館に問い合わせていいですか? 法律事務所の名前なんですか? 俺も多少は日本大使館を見知っているので……」 とは言わなかった。
だって、ハマちゃんが、年下にペラペラ気分よく喋っているんだから、それを邪魔しちゃ悪いじゃないか。ハマちゃんは凄いのである。
そうして。少しだけ、我々に不安の影が生まれた。
もしかして、この人。マジで言ってるんじゃねーだろーな……
相談
なんか相談ないですか? というので、俺とツレはウーンと唸った。最大の難関。エアコン買ってくれたしなあ……ハマちゃんには感謝なんである。
ツレは、「あえて言えば、フィリピンペソを少し多めに抱いているので、円に換金できればいいなあ」的なことを、雑談の中で言った。 別に市中で両替すれば済むのであるが、これはハマちゃんに花を持たせただけの話である。
そうしたらハマちゃん、今すぐ両替できますよ! やりましょう! ということで、あちこちに電話をかけ始めたのである。
「いや、別にいいですよ……マラテでやりますから……」
とツレも言ったんだが、今日解決できますということで、じゃあまあ。エアコン買ってくれたし。ということで、両替をすることになったのだ。
金額は覚えてないが、100万円~200万円くらいだったとおもう。ペソを抱いていても仕方ないので、そのうち両替に行くか、くらいの話だ。
これがまた面倒くさい話になるとはおもってもみなかった
(つづく)
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