日本ド底辺の宿:ドヤ街に泊まってしまった話
こんなところに泊まるつもりはサラサラ無かったのである….
日本記事・第二弾として(ネタになるから書けと言われたので)一応書いておくことにする。
全てが裏目に出た日
俺は、日本一時帰国の折りは、後半の予定を立てないことにしている。
突発的にアポが入ることもあるし、飛行機が遅延して予約していたホテル全滅ということもあるし、なにより行動の自由を制限されたくないからだ。例えば今から新潟来れますか?と言われたら行きますと言えるくらいの体勢にはしている。フットワークは軽くしておきたいからだ。
それになにより日本である。言葉も通じる文字も読める、誰かしらの家にお願いして、泊まっちゃうことも出来ないことじゃない。余裕なわけだ。ま、泊まる場所がないなんてこと、万万が一にも無いっしょw
というわけで、一時帰国時、全てが裏目に出た日のことを書こうと思う。
カード停止
俺は名古屋から京都に移動していた。ホテルは大阪で取るつもりで、適当に7000円くらいの相場ホテルを予約していた—ハズだった。
予約が完了していなかったのも知らず、俺は京都でフォロワー様と会い、パカパカ酒を飲み、新幹線に乗って「焼酎のお茶割ウメェ!」なんつって大阪移動をしていた。
そしたらホテルの予約どころかカードが停止していたのである。理由は不正利用検知。
あああああ…海外利用で止められたのであった。
日本という海外で、フィリピンのカードを使った結果「海外不正利用」に引っかかったのである!
焦った俺はカード会社に連絡。運悪く金曜日の夜であった。返事は1-2banking day つまり希望的観測で言えば来週の月曜。
これをフィリピン翻訳すると『再来週くらいに もっしっかっしたら復活するかもね♪』ということである。ハイ、カード一枚死んだ。
まぁ現金の持ち合わせはあったし、何とかなるだろうと思ったら…今度はホテルが空いてないときたもんだ。ツイてないのだった。
いやマジで全く空いてない。
なんでなのと思ったら勤労感謝の日で連休らしく、どこも満室。あったとしても一泊5万円とかいう話であった。エアビーもログインできず。たかが寝るだけで5万は無いよなぁ…
しょうがないので天王寺へ
じゃあラブホに泊まればいいじゃない?と思ったが、ラブホも満室満室で全くダメ。じゃあもう仕方ない。俺は漫画喫茶に泊まるのだけはイヤなので、外人がよく利用する一泊3000円くらいのホテルをウオークインで(←飛び込みのこと)当たることにした。
うまくいけば、なーに返って節約になる!wwとばかりに片っ端から聞いて回ったんだがどこも満室。キャンセル待ちの外人が外で立ち話をしている始末。
しょうがないのでドヤ街へ
背に腹は代えられぬ。とにかく泊まるところがないのはマズイ。この際ドヤに泊まるしかない。なにしろもう夜9時であった。
俺はドヤの清潔系ホテルには何度も泊まったことがある。全く問題ないことは知っていた。イマドキの令和ドヤホテルは清潔で、女性専用もあるし屋上大浴場もあるのだ。
ところがなんとなんと。そのドヤ街ですら満室なのであった。そんなことあんの?!あったんである。
もうこうなると手段を選んでいられないので、とにかくどこでもいいから泊まれる場所を、荷物ガラガラ引きずりながら一生懸命探した。
そして見つけたのが、この宿である。空き室アリと書いてある。助かった!地獄に仏、トイレに紙である。
ウッ
でもここってもしかしたら昭和のガチ系ドヤなんじゃないでしょうか…そんなオーラが漂っているのは承知していたが、もう選択肢がない。
とにかく片っ端から回って見つけたのがココだ。判断力も衰えていたし、疲れていた。空室アリ。これが俺には救いに見えた。泊まれるのだ。じゃあもうどこでもいいじゃない!
今日空いてますか?
「あー空いてるよ」
じゃあお願いします
「—ニイチャンサァ!表の看板にサァ!一泊1000円って書いてあるけどサァ!」
(書いてあんのか見てなかったけど)ハァ
「空いてないんだわ」
ハァ
「一泊1500円すっけど!!(強調)いい?高いけど冷蔵庫付だから!」
イイも悪いもない。ほとんど誤差の範囲内である。あ、500円高いと言いたかったのね。いいよいいよ。なおデポジットは1000円であった。
渡された領収書がまた香ばしい。賃貸契約書になっているw いろいろツッコミどころ満載の紙ではあるが、もう俺は疲れ果てていた。とにかく一夜の宿を取れたという安心感が勝った。なにやら7日以上滞在するものとする、とか書いてあるがw ま、どうでもいいでしょ。こんなもん通用するわけないんだから。ハンコも署名も無く一方的に渡されただけ。こんな「契約書」通るとでも思ってんの?とは思った。トラブルになるようなことは、ま、なさそうだ。どんな理屈なのか知らんが甘受することにした。
俺は2500円を支払い、宿泊すると伝えた。
フロント正面に、土足厳禁とハッキリ書いている。下足箱があったので靴を脱いだら、「土足でいいよ!」と後ろから声がかかる。
ああ..ハイすいません…(どっちが客なんだ)…ってゆーか、じゃあこれ剥がしておいたら良くね?と思ったが、それは言わないでおいた。
自販機のジュースが60円…マカティのイセヤも裸足で逃げ出す衝撃価格である…昭和だって100円はしたような気がするんだが…電気代も出ないんじゃないのコレ…いや、言うまい。どうやらココはホンモノのドヤだ。なんちゃってファッションドヤじゃない。ガチだということは分かった。
ともかくエレベーターに乗り、階下に降りたら、そこは凄い光景だった。
え、ここ日本ッスか?
まったく清掃されていない。いや、清掃という概念がないんじゃないか。(写真には取らなかったが、便器にはアレが山盛りであった)
部屋の電気。マジで冗談でしょ?という感じ。
室内。冷蔵庫がポイントである。なおフローリングになっており、(畳ではないので)清潔なんだそうだ。
30年くらい前のホテルにあった、このタイプのアラームクロック!懐かしい!当然死んでいた。
もっとも重要な寝具だが、掛布団がもう、虫さんの住処みたいなオーラ漂う、重~い布団だったので速攻蹴り飛ばした。見ただけで痒くなりそうだ。ミニーマウスの絵柄がもうね。もうなんちゅうか無理だった。。
さて。
もっとも高い部屋にチェックインした俺が、まず行ったことは他のホテルを探すことである。ここは無理!
そもそもコンセントがない。俺も色んなところに泊まってきたが、コンセントの無い部屋というのは初めてだった。(厳密にいえば天井近くにあったんだが)
しかし時間も回り、通常のホテルだとフロントもいなくなる時刻。どうやら今晩はここに泊まらざるを得ない。
仕方ないので近所のローソンに行き、せめて酒でも買ってきて、酔っぱらって寝ることにしたんだが、ココとにかく暗いので、共用トイレで別の客と出くわしたときなんか、お化けじゃないかと思って心臓バクバクだった。
やることがないのでスマホいじっていたら、カードが復活していた…まさかの…w
大阪ガチのドヤ街の天井を眺めながら。それだけが唯一の吉報だった。
明けて翌日
チェックアウトは、まさかの八時半という、通常の宿ではちょっと考えられないような早さだった。これもドヤ特有の「文化」なのかもしれない。俺は八時に起きてフロントに行ったんだけど、そしたらなんとフロントが空いてなかった。
近所には、こんな張り紙がたくさんあった。
日給11000円に3500円引かれる募集広告…それでも身体が動くうちはいいのだろうが…
チェックアウトが八時半というから待っていたんだけどフロントが空いてないから、俺はドヤ街の朝を眺めることができた。
それはそれで、いろいろ思うところがあったよ。例えば困窮邦人の行先として、こういうところで再起を図る人もいるんだろうが、正直無理だろうな。俺の知っている困窮邦人は、誰一人、これに耐えられないと思うわ。
なんか、思いもかけず、ガチドヤに泊まってしまったんだが、正直。こうはなりたくないなとおもった。あまりに希望が無さすぎる。
千円デポジットもあるし、鍵も返せないしで、俺は入り口でボゲーっと突っ立っていたんだが、そしたら9時すぎにニイチャンが来てポロっと1000円くれた。ああ、どうも、みたいな感じで「ありがとうございます」とハッキリ言った。挨拶できるんだ!と俺は嬉しかったね。このニイチャンも、きっとなんらかの人生のストーリーがあるんだろう。賃貸借契約の話はもちろん無かったw
俺はまっすぐに、次に予約済の東横に移動することにしたw
価格は実に7倍であるが、安いからと言っても1000円延泊をする気にはなれなかった。すまんな。俺は風呂に入りたいんだ。
それにしても。
このガチドヤと「賃貸借契約」をしている人々を、俺はバカにしないだろう。こういうひとがいて社会が成り立っている一面もある。
俺は日本旅行者として、うっかり泊まってしまったんだが、少し考えさせられた。二度と泊まることはないだろうけど。
注:朝の写真と夜の写真が前後して掲載しております。話の流れで読みやすくする為に、前後逆にして掲載している写真があります