バランガイの基礎知識(3)

バランガイの選挙では、候補者が自らの政治信念を語ることは無い。
おそらく、世界一の予定調和選挙だろう。

何故かというと、あまりに選挙区が小さすぎる為、候補者がどんな考えをもっていて、
これからバランガイをどうしていくかというのは、土日に貼られているテントに行けば
ヤギの肉を勧められながら死ぬほど聞かされている話なので、
もはや住民にとっての政治運動というのは終わっているのである。
バランガイ選挙活動というのは「知ってた」なのである。

選挙というのは身近な話題だし、家庭内でも話題になることもあるだろう。
だから投票先というのも住民は事前に決めていることがほとんどである。

 

面白いのは、バランガイというのは小さすぎる世界なので、
フィリピンの一般的州知事、市町村選挙のように荒ぶることがない。ワリと純粋な選挙となる。
つまり対立候補が出てきて、逆転失職もあり得るのだ。
(州単位、市町村単位では、ほぼ100%に近いほどあり得ないがバランガイ・カガワッドは有り得る)

だから激戦区も普通にある。候補側はキャプテンを中心とした評議員軍団を作る理由もそこにある。
被選挙権は誰にでもあるんだから、バランガイ選挙というのは汚染されまくった比の選挙において、
少しだけキレイな気もする。

昨日、バランガイ選挙の買収で捕まったヤツがいたけども、あれは荒れた選挙区の警察が
対立候補にテコ入れしていただけの話。比のニュースというのは基本的に読み解きがいるので、
ローカルニュースでもバイアスがかかっていると思っていたほうがいい。
(※なお日本のマスコミは比のことを知らないので読まない方がいい)

選挙運動はない

今日、わたしは自分の選挙区のバラキャプ候補とすれ違ったんだけども。
本当にどの陣営も選挙運動というのは無い。笑っちゃうほど無い。
なんせ42000の選挙区である。激戦区では両陣営、バスケットコート集会をするわけだ。
わたしは自分のバランガイで、熱い選挙区にあったことがないんだけども、北ルソンではあるらしい。

まぁほとんど全部の場合、
音楽をズンドコ響かせてポスターを見せるというのが比流なんだけど、うるさくて仕方ない。

候補者としては、選挙というのは審判を受ける場である。
どんなに偉ぶっていても選挙だけは絶対がない。
だから運動するんだろうけども、せめて一言でも、なにか政治的な発言なりしたらいいんじゃないのと思う。

あそこの道を整備するとか、橋を架けるとかね?

バランガイ選挙は町内会なので、一般的に住民としては信任投票の色合いが強い。
だから、候補者の政治的信念や公約を知る機会が無い。

わたしはバランガイ選挙で投票権がないんだけども、自分の住んでいる地区は他人事でもないわけだし、
町内会のキャプテンがどのように自治をしていくかというのは普通に興味はある。
(なお外国人でもバランガイの集会には参加できるし発言もできます)

 

バランガイは日本人に関係ない?

マカティもBGCもパサイも、一応バランガイの管轄区にはなっているものの、
日本人在住者にとってバランガイはほとんど全く関係のないものだと思う。

しかし、マニラとセブ(のごく一部)以外に住んでいる在留邦人にとっては、バランガイのことを
知っておくべきだと思う。使いようによってはかなり便利だからだ。

というのも、バランガイというのは、国家権力が及ばない地域を輔弼する自治組織以上の意味が
あるからだ、前述したように、歴史的にもバランガイが先にフィリピンを自治してきたのだ。

だから、駐在員ではなく比の自営業者の人は、バランガイ組織に顔を出し、付き合いをしたほうがいい。
路上に貼ってあるテントを覗き声をかけ、タッパーに入っているよくわからない肉(ヤギか猫である)
を食べ、誰かの誕生日をお祝いして、300ペソくらいのケーキを差し入れる行為が、
あなたのバランガイでの身を守る事に直結する。

バランガイの付き合いというのは日本の村社会のようなものであるのだが、
幸い私たちは村社会を知っている。
この文化を知っているだけでもアジア人で良かったと思えるほどである。

だから、いわゆる地元人として振舞えばそれでいい。
一度仲良くなってしまえば、外人割引は天井知らずに適用されるのである。
わたしはその恩恵を何度も受けている。

日曜日、道端でテントを張っている奴ら。あれに声をかけて仲良くなる行為。
推奨するわけじゃないけど、一度もやったことがないのなら、一回やってみればいいとおもう。
何故なら、あなたの所属しているバランガイの考えを知ることが出来るからだ。