比の税金について:マカティ一揆の話

比には日系、いや具体的には外国企業が進出した場合の税制優遇やVISA優遇があったりする。
他の途上国にもそういった制度はある。比で有名なのはPEZAという経済特区だ。

フィリピンに住んでいると、割と税金の相談というのがあるんだけど、この相談が実に面白い。
というのも、その相談内容によって、その人の海外経験が透けてみえるからだ。

まず。

基本的に、比の税金について、法律や優遇措置等について勉強し、語っているヤツは、わたしに
言わせると、「コイツなんにも分かってないな。比でビジネス経験してんのか?」位の感想と
なってしまう。

いやそれは無茶だ暴論だというなかれ。無理が通れば道理が引っ込むのである。

こちらでタフにやっている商売人の人たちは、比の税法なんてほとんど何も知らないけど
全ての書類は揃っているという場合のほうが圧倒的に多いからだ。それは仕方ないのである。

 

日本人はかつて一揆を起こしたことがある

BIR(税務署)は基本的にやりたい放題である。比で腐っている役所はBIRとLTOというのは
いつの時代にも語り継がれている事実である。

わたしたち日本人というのは基本的に真面目で純粋で、アジアの先進国ということになっている。
だから、袖の下だの交渉だのというのを嫌がる人も一定数いる。
それは良いことである。否定する理由が無い。

日本人はみんな、役人に賄賂を渡したくないのである。

それで、過去日本人が立ち上がったことがあったのだ。

それはVATの還付金問題についてである。
日本が立ち上がってマカティに喧嘩を売ったことがあったのだ。これを私は勝手に、
「マカティ一揆」と呼んでいる。

 

日本は法律を無視できない

マカティに本社を置いている日系一流企業様ら(錚々たる超一流企業様ら全部である!)
が、VATの解釈を巡ってBIRと対立したことがあった。
ほとんどの場合、国際会計事務所から指摘を受けて訂正した訳だが、
マカティは、一度受け取った税を還付するわけがない。そりゃそうだわな。

いやそれはおかしいよね?フツー・・・ということで、いままでのストレスが大爆発。
在比日系企業というのは歴史も長い。これまで各個に戦ってきた裁判も数知れず。
もういい加減、その『財布に入ったカネは俺のカネ理論止めろ』よ!なぁ?!と、
ついに日本が激おこしたことが過去あったのである。

 

マカティBIRも「じゃあ裁判でもなんでもやれば?(笑)」みたいなナメた態度を取ったので、
日本企業こぞって『お前らいい加減にしろよ裁判』これはガチでやりあった。
本来であればコレ、ちょっと政治的な部分も含まれて然るべきなんだけども、例によって
我が国は政治三流なんで、日本企業を後押しする動きはついぞなかった。

 

結果どうなったか。日本軍敗北である。
比の裁判所の基本として、こういうことになると外国企業はまず負ける訳だが、
この「俺たちは真面目に申告したんだかんな?」というのは、
一種のアリバイにもなってしまった。商売人とはそういうものである。
真面目に申告した結果発生した、ごく少ない還付金も戻らないなら、もう法律じゃないじゃん。
と、日本は思い知ったのである。じゃあ!これまで拒否してきた賄賂で、
税金半分でもいいんだな?俺らそっちのほうがいいんですけどいいんだな?

もう、比政府が真面目にする気がないんなら、付き合いきれないという風に、
日本企業も変質していったような気がする。
返す返すも、あのマカティで真面目に払った還付金裁判はどうにかならなかったのかと思うよ。

 

PEZA企業も、今やBIRと交渉する時代

「お前らの税金は1000万ペソ!」
高すぎるよ
「じゃあ、俺に100万くれたら払ったことにするよ」
それもキツイナー

毎年こんな会話をしているようでは、もはやPEZAもクソもない。
このブログを読んでいるPEZA日系企業。異論を唱える会社は無いであろう。
だって交渉すれば、PEZA特権以上に税金が圧縮されるんだからな。麻薬みたいなもんだ。

日本ではコンプライアンスなのかも知れないけど、比の事情というのは全く異なるし、
グローバル企業ともなると、この手の話なんて、別に比に限らずアホほど出てくるものだ。

いまPEZAの話をしたけども、BIRの交渉事というのは個人事業主レベルでも
充分ある。真面目に払う奴(担当者が一銭にもならない)ほど商売がやりにくくなる。

不正は嫌だけど抵抗はしたいというのが日本人

面白いもので、日本人というのは基本的に不正を嫌う。
でも、発展途上国で仕事や商売をする上において、息の音を止められるというのは無理だ。
誰だって自分がカワイイし、抵抗しても全くの無駄だからだ。(マカティ一揆でみんな分かった)

じゃあどうすればいいの?というところで、
例えば酒税を払わないために、ビールをメニューに載せないという飲食店が日系増えた。
(メニューに載ってないというのはかなり強くてBIRも何も言えない)
まぁ酒税については比は細かいので(酒という一括免許ではなくて酒の種類別に許可がある)
メンドクサイというのもあるんだけど。

BIRの賄賂とどう付き合うべきか?

BIRの賄賂は担当者との交渉なんだけど、まず仲間の日系企業のオエライと、
いきなり直電でもいいから連絡したほうがいい。だいたいの場合悩んでる。連携していこう!

日本企業同士、横のつながりは絶対あったほうがいい。それもスキルのうちである。
本国にいる連中なんてなにも知らないんだから、遠い国より隣の工場である。

BIRの賄賂交渉についてはここでは触れない。
普段運転手付の車を転がしているんだから、身分が違う。
私みたいなゴミくずのアドバイスなど要らないよね?(はーと)ということで、自社で
解決してくれたらいいんじゃないかな。